「簡単な球は少ない」最速163キロ右腕・佐々木の球を受ける幼馴染の捕手の献身

大船渡・及川恵介【写真:編集部】
大船渡・及川恵介【写真:編集部】

小学校からの知り合い 「朗希がいなかったら…」野球を辞めていたかもしれない

 高校生最速163キロ右腕、佐々木朗希投手のボールを受けるのが、及川恵介捕手(3年)。佐々木とは小学校時代からの付き合いだ。佐々木が「ずっと一緒にやってきたので甲子園で一緒にバッテリーを組みたい」と言えば、及川も「160キロの球をいつか受けたい」と夢を語る。

 佐々木が163キロを出したのは、高校日本代表の合宿。他の捕手に記録的な剛速球を受けられ、ずっとバッテリーを組んできた及川は「ジェラシーを感じないわけではないですが……」と悔しさを隠そうとはしない。

 昨秋の大会では、佐々木のキレのあるスライダーをパスボールしたり、150キロを超える剛速球に押されてしまい、ミットが動いてしまうなど、「朗希に迷惑をかけてしまった」と振り返る。

「簡単な球は少ないんです。なのでフレーミング、ストッピングを練習してきました」

 昨年の冬から夏にかけて、鋭く曲がるスライダーをしっかり捕球しようと、一人でマシンが“投げる”スライダーの捕球の練習をした。140キロのマシンを3メートル前に出して、体感150キロの直球を受け続け、ミットが動かないようにしっかりとボールをつかむ練習を冬の間、ほぼ毎日行ってきた。

 力強い剛速球を受け続けてきた手を見つめ「痛くないですよ」「突き指? ないですね」。強気な言葉を並べられるのも、練習を積み重ねてきたからこそ。今、使用しているミットは3個目。壊れたミットは佐々木と一緒に歩んできた証だ。

 中学時代、進路に迷っていたところ、佐々木に「一緒にやろうよ」と声をかけられたことがきっかけで公立の大船渡への進学を決めた。「自分が野球を続けるきっかけにもなった」「朗希がいなかったら……今は野球をやっていてよかったです」と振り返り、感謝の思いを忘れない。

 扇の要でもある及川は上位打線も任され、攻撃でもチームのカギを握る。「いろんなプレッシャーは感じますが、イキに感じて頑張りたいです。朗希には日本一の投手になってほしいです」。強い絆を支えに、最後の夏へ船出する。

(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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