「勝ったチームが一番強い」 U-18日本代表監督が語る夏大会初戦の難しさとは?

劣勢も跳ね返す「逆転の報徳」の原点、メンバー選考の苦悩…

 報徳学園で指揮を執った23年間で夏の県大会初戦で敗れたことは1度もない。幾度となく劣勢の状況から試合をひっくり返す“逆転の報徳”はどこから生まれるのか。

「思うような試合展開にならなかった場合に一番、焦るのは子供たち。監督が少しでも焦った姿を見せれば子供たちは今まで以上に精神的に響いてきます。どんな状況でも気持ちを落ち着かせ勝機を見出す。相手のデータや癖、そして選手たちのコンディション、精神面。試合が始まる前からすべてを頭に入れ采配、起用法に結びつけることが大事になるのではないかと。だからこそ、これまで積み重ねてきた選手たちとのコミニケーション、性格などを把握しておく必要があります」

 報徳学園の練習ではレギュラー、控えを分けることなく全員が同じメニューをこなす。入部条件は存在しない。推薦で入る選手もいれば、一般入部の生徒にも門戸を開いてる。少数精鋭を取り入れなかった理由を指揮官はこう語る。

「野球だけの人間にはなってほしくない。高校野球を終えれば大学にいく生徒、社会人として働く生徒もいる。野球の技術も成長してほしいですが、人間性も成長してほしい。辛いこと、成功体験、喜びなど全員で共有して一つのチームとして戦っていく。ここ一番で力を出せるチーム、全員野球で戦ってほしいと私は思っていました」

「これはいつも言うことなのですが生徒たちには『4つのC』という話をしています。Chanceがあれば、それにChallengeする。戸惑うこと、迷うことがあればChangeも必要。そして、野球だけでは無く人生の勝利者、Championになってほしいと」

 監督として一番つらい瞬間はメンバー選考。100人も及ぶ大所帯からベンチ入りメンバー20人を選ぶ際には何度も自問自答したという。

「背番号1から9ぐらいまではパッと思い浮かぶ。だが、そこからは何時間もかかってしまうことが多い。リリーフ、代走、代打…。色々な試合の状況を考えますし、実力が同じ選手だっている。どっちの選手が試合で力を出せるのか、ここまでどれだけ努力してきたかなど決めなければならない。最後の選手発表に涙を流す生徒を見るのは何年監督を務めてきても辛いものがあります」

 県大会では20人、そして甲子園では18人の選手を選考していく。報徳学園の中で「ミスター報徳」という1枠が存在する。技術的には他の選手たちよりも劣るがムードメーカーとしてチームを支える一人だ。

「ただ単に“お調子者”を選ぶわけではない。日頃の練習態度などを全て把握して決めています。選手、首脳陣、誰が見ても納得する一人を。中学までバレー部だった子もいましたが、その選手は素晴らしい努力を見せ、甲子園のメンバー入りを果たしたこともあった。それが後輩たちにも励みになる。誰にでもチャンスがあると思えば生徒たちの目の色も変わってきます」

 夏の甲子園が終われば、8月30日から韓国で「第29回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」が行われる。日本がまだ手にしたことのない悲願の世界一に向け永田監督の采配に注目が集まる。

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