指導者、保護者に届けたい 投力低下を防ぐ、ヤクルト「投げ方教室」が喜ばれる理由

投げ方教室で都内の小学生に「出前授業」を行うヤクルト広報部の河端龍さん(左)と徳山武陽さん【写真:編集部】
投げ方教室で都内の小学生に「出前授業」を行うヤクルト広報部の河端龍さん(左)と徳山武陽さん【写真:編集部】

元投手で球団職員の河端龍氏と徳山武陽氏が都内の小学校をまわり、授業を展開

 先日、ヤクルト球団が小学生の投力低下の改善のために取り組んでいるボールの投げ方教室「出前授業」を取材した。2013年から抱えている課題克服の手助けができるように、またスポーツに親しむ習慣を身につけてほしいという願いを込めて、球団職員で元投手の河端龍さん、徳山武陽さんらが中心となって、学校で教えている。最初は野球に親しみをもてもらうことや、技術指導が中心かと思っていたが、実際に密着してみると、そうではなかった。

 校庭で元気な子供たちの声が響く。

「行くよ~!」「うぁ~ボールがそれた~」「すごーい!」

 ユニホームを着た“コーチ”の河端さん、徳山さんも負けてはいない。

「ナイスボール!」「もっと左手を使って投げてみて!」「上手になったね!」

 休み時間ではない。授業の1コマとして子供たちは楽しみながら学んでいた。

 都内の小学校では5月にスポーツテストを行うことが多い。ボールスローの数値が以前と比べて低下していることを知ったヤクルト球団が改善への手伝いができないかと考え、2013年から「出前授業」を実施。多い日は2人で1日、1時間目~6時間目まで6コマの授業を行っているという。他の球団では振興部というような部署が担当することが多いが、河端さん、徳山さんは広報部所属。活動が多岐に渡っている。

 河端さんが話す。

「野球人口を増やすということも大事なことですが、まずは(ボール投げや野球に)興味を持ってもらうことが大切。先生から『子供たちがあんな楽しそうに声が出せるとは思わなかった』と言ってもらえた時は嬉しいですね」

 この日は杉並区内の小学4年生が対象。4クラスに1時間ずつ授業を行った。

 どんなことを教えるのか。まず基本姿勢から腕と足の動きを覚える。コツをつかんでもらえたら、その後は柔らかいスポンジボールを使ってボールの握り方、距離をとってキャッチボールをする。そして遠投に挑戦。遠投はゲーム形式。2チームに分かれて投げた距離が遠ければ遠いほどポイントが高く入るルールで勝敗を決める。元プロがお手本を見せれば、驚きの声があがる。45分の授業の中で子供たちが楽しめる要素が組み込まれていた。

 これだけでも子供たちは楽しい。最初は戸惑いながら体の使い方をマネしていた生徒が、どんどんボールの距離が出る。「あっという間でした」「スポーツテストでは30メートル、40メートル投げられそうな気がします」と手応えを感じていた。

 投げ方教室ではあるが、これは“授業”。技術指導以外にも注目すべきポイントがあった。

ゲームで競わせる チームに分けて作戦会議 勝敗がつく…「記録が伸びるのは嬉しいですけど、それ以上に…」

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY