余命1年ステージ4の癌から早2年余り…不死鳥の“王キラー” 元燕左腕を駆り立てる夢

王貞治氏からは激励の色紙が届く「癌なんかに負けてたまるか! 笑って死んでやる!」

 目の前にいきなり突きつけられた人生の岐路。それでも、マウンドで見せた勝気な姿は、影を潜めることはなかった。

「癌なんかに負けてたまるか! 笑って死んでやる!」

 かつての“好敵手”からの思いもよらぬ激励にも、心を支えられた。診断されてから約3か月後、知人を通じて1枚の色紙が届いた。送り主は「王貞治」。達筆な文字で、こう記されていた。

「気力を持って、乗り切ってください」

 その色紙は、新人王と連続無四球記録の賞状の間に飾った。「もう、本当にうれしくてね」。すぐにヤフオクドームに出向いてお礼を伝え、その翌年にはソフトバンクの春季キャンプにも訪れた。倒すべき敵となった癌と向き合い、6週間に1度のペースで抗がん剤治療などを継続。すると、次第に治療の負荷も少なくなっていったという。「病院の先生からは『1年前と比べてもがんは進んでいない』と言われてね。ただ、完治はせん。一生付き合っていくしかない」

 衰えない情熱が、体を動かす。今も治療の合間を縫って福岡に通い、高校生たちの指導に精を出す。余命1年の宣告から、間もなく2年半。次なる夢を問われると、黒々と瞳を輝かせて豪快に言った。

「そんなもん決まっとるやろ、小倉高校の甲子園出場や!」

(小西亮 / Ryo Konishi)

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