元DeNA荒波翔が独白 メキシコ挑戦で芽生えた思い「海外での経験がセカンドキャリアに」

現地で触れたメキシコ人の温かさ「はじめましてからフレンドリー」

――生活面はいかがでしたか?

「ホテル暮らしだったので、浴槽がないのはきつかったですね。球場には半身浴ができる設備があったので、それを使っていましたが、日本のようにお湯に浸かって体を温めたりすることができなかったので辛かった。あと、メキシコの人って野菜をあまり食べないので、ホテルの食事にも野菜があまり出てこないんです。なので、食事の前に野菜を売っている店に行って、買って食べたりしていました」 

――メキシコ人の特徴は?

「言葉が通じなくても優しく接してくれたり、すごくフレンドリーで温かい、優しい人が多かったです。日本は言葉が分からないとつい受け身になってしまい、コミュニケーションを取ることを避けてしまう人が多いと思うのですが、向こうの人は人見知りもせず、はじめましてからフレンドリー。言葉が通じないと分かっていても声をかけてきてくれます。また、ポジティブな人が多くて、落ち込む人が少ないのが印象的でした。スペイン語の分からない私としては、異国の地での何気ない一言、コニュニケーションはすごく嬉しかったですね。それと、日本だと連敗するとチームの雰囲気も悪くなりますが、向こうの選手は引きずらないんです。とにかく切り替えが上手く、サバサバしている。そういった意味でも伸び伸びやりやすい環境でした。日々、上手に切り替えができるところはメキシカンリーグの選手の良さだと思いました」

――シーズン途中での戦力外となりましたが、シーズンを振り返って思うところはありますか?

「キャンプも含めて4か月でしたが、異国の野球に触れることで新たな発見もあり、想像以上に充実した日々を過ごすことができました。メキシカンリーグの舞台に立つチャンスを与えてくれたスルタネスには心から感謝しています。また、日本のファンの皆さんからの応援は本当に嬉しかったですし、一番の励みになりました。メキシコでの経験は僕の人生の宝物ですし、スルタネスでプレーできたことを誇りに思います。なかでも、久保さん(久保康友投手)の所属するブラボス・デ・レオンとの試合で『侍シリーズ』を開催していただいたことは、日本人としてすごく嬉しかった。日本では外国人のためのイベント試合というのは聞いたことがありません。でも、漢字で『荒波翔』と書かれたTシャツをメキシコのファンの人が着てくれていたんです。これをきっかけに日本に少しでも興味を持ってもらえたらいいな、と思いました」

――今後はどういう展望を持っていますか?

「メキシコにいた時も横浜や神奈川のファンの方々には応援してもらっていたので、何か恩返しできる形を考えています。将来的にはNPBのコーチや、子供に教える場所を探してもいいのかなと思います。解説の仕事にも興味があります。海外での経験がセカンドキャリアに繋がればいいと思っています」

――最後に、メキシコで感じたことを教えて下さい。

「メキシコの野球は日本よりもレベルが低いと言われていますが、全部が全部そうではない。米国の独立リーグも日本のプロ野球よりも球は速いと言いますよね。メキシコもトータルで言えば日本のプロ野球の方がレベルは高いかもしれませんが、個々の部分で見ればそうではない。行ってみて分かったのは、投手のコントロールは日本の方がレベルは高いが、打者は日本よりも強いスイングをするということ。今年は久保さんや横山くん(横山貴明投手=元楽天、ディアブロス・ロホス・デル・メヒコ)、そして僕がプレーしたことで、日本でもメキシカンリーグに興味を持ってくれた方が少なからずいると思いますし、メキシコのいいところ、悪いところを知ってもらえるきっかけになったと思います。そして今後、もっと日本からメキシコに野球をしに来る人が増えたらいいですね。今後は、メキシコはこういうところだよ、ということを伝えていきたいですし、日本とメキシコの架け橋になれればいいなと思っています」

(福岡吉央 / Yoshiteru Fukuoka)

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