鷹・柳田が思わず涙した理由 全治3週間も想定外の長期離脱、先見えぬ不安…

4か月ぶりに実戦復帰したソフトバンク・柳田悠岐【写真:福谷佑介】
4か月ぶりに実戦復帰したソフトバンク・柳田悠岐【写真:福谷佑介】

8日のウエスタン・リーグの広島戦で、4月7日のロッテ戦以来となる実戦

 8日に福岡・筑後市のタマスタ筑後で行われたウエスタン・リーグ広島戦で4か月ぶりに実戦復帰を果たしたソフトバンクの柳田悠岐外野手。復帰初戦は2打席に立って交代となったが、試合後、報道陣に対応している最中には感極まって涙を流す一幕もあった。

 見ていた報道陣が驚いた。普段は底抜けに明るく、周囲に弱みをほとんど見せない柳田が、突然涙を流したからだ。しかも、取材に応じている最中、テレビカメラの前にも関わらず、涙が瞳から溢れ出た。離脱していた4か月間について問われると、言葉に詰まった。そして、「治るかどうか分からない部分で不安な気持ちがありました。4か月間を思い出したというか、よう打席に立てたなと思います」と声を振り絞り、涙が頬を伝った。

 2回の先頭打者として4か月ぶりの打席に立った柳田。復帰初打席はまさかの死球だった。広島先発ケムナの148キロが右太ももを直撃した。思わず絶叫した柳田だったが、まさかの死球に笑みすら浮かんだ。3回1死一、二塁での第2打席では3球三振。復帰戦は2打席無安打と快音は響かなかったが、「まず打席に立てたのが嬉しい気持ちです」と振り返った。

 柳田は「不安な気持ちがあった」と、その心境を吐露した。それも無理もない。4月7日のロッテ戦(ヤフオクD)で左膝裏の肉離れを負った。「左半膜様筋損傷」を負って離脱した。当初は全治3週間と診断された。だが、症状は当初の見込みよりも遥かに重症だった。患部の痛みは引かず、リハビリのペースも上がっていかなかった。

 なかなか思うように回復せず、当初の全治想定からも、復帰は大幅にズレ込むことになった。先の見えないリハビリ生活となり、本当に治るのか、という不安が胸の内でどんどんと膨らんでいったとしても、何ら不思議ではないだろう。そんな不安、心配の中で1か月、2か月と伸びていくリハビリ生活を柳田は戦ってきたのだ。

 だからこそ、4か月にも及ぶリハビリ生活を経て、実戦のグラウンド、打席に立てたことが嬉しかった。「野球をできるようになっているので、良くなっていると思います。練習すれば大丈夫」。練習すれば大丈夫、そう、これまでは練習も出来なかったのだ。言葉自体は短かった。それでも、その言葉には長い間、プレー出来なかった柳田の喜び、思いが滲んでいるように思えた。

 そして、この日灼熱のタマスタ筑後で背に受けたファンの大きな声援も嬉しかった。「こんな暑い中で応援してくださってありがたい、嬉しいです。ありがたい気持ちしかないです」。試合中はベンチで大きな声をあげ、ベンチ前で仲間を出迎える姿もあった。「楽しいですよ」。心から野球を楽しんでいる柳田の姿がそこにあった。まだ、4か月ぶりに実戦復帰を果たしたばかり。1軍復帰にはまだ少し時間はかかる。それでも、この1歩は大きな1歩。それは柳田の涙と姿が物語っていた。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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