「ヤクルトから日本の宝を」 参謀らが語る19歳・村上が持つ無限の可能性

石井琢コーチが重ねる新井氏の姿 杉村コーチ「ヤクルトから日本の宝を」

  自主トレを共にさせてもらったことにより、自分のことを理解しアドバイスをくれる先輩が身近にできたこと。完成された高校生が、さらに成長するためにこんなに大きくありがたいことはない。

 石井琢朗一軍打撃コーチも、厳しくも大きな期待を持って村上を指導するコーチの一人だ。

「彼に求めていること、僕たちはとても高いですよ。広角に打てるし、飛ばす力はあるし、スイングスピードも素晴らしい。でもその中で、僕たちはまだ、周りが騒ぐほど満足していないんです。この1年の数字ではなくて、来年以降の彼の姿や数字が評価につながると思うし、5年後10年後を見据えて、人間的にも成長してほしい。」

 この人間的な成長を、特に石井コーチは村上に求めている。

 これは石井コーチが、広島カープのコーチ時代に新井貴浩氏を見てきて感じたことだ。新井は様々な苦労を経験してから、チームや周りの選手に対しての献身的な心が生まれ、人間味やいい意味での人間臭さが出て、周りから慕われる選手になっていったと石井コーチは感じている。その影響は今も後輩選手に受け継がれ、チームの強さにもつながっていると回想する。

 冒頭の村上が話した言葉のように、使われていると分かっているならば、もう一歩、その先の考えにも辿り着いてほしいという親心がうかがえる。自分が中心になって打てるということを大切にしながら、脇を固めてくれる選手がいてくれるからこそできているプレーがあること、周りの選手の気持ちもわかる選手になって欲しい。「19歳に言うのは厳しいかも知れないけれど…」と石井コーチは話したが、それだけ大きな期待をしている証拠だ。

 改めて、杉村コーチの言葉。これからの村上に大きな期待を込められていた。「ここからは僕らが、彼を日本の代表する選手にすること。それが義務。可能性は十分ある。ヤクルトから日本の宝を出さなきゃね。守備や走塁など足りないところはあるけれど、小さくならずに、長打が打てることはとてもすごいことなんだから!」と、責任感の中にも期待感あふれる笑顔だった。

 村上について語る人たちの目は、厳しくも、皆とても暖かい。若手の成長がチームの成長にもつながるというだけでなく、自分たちの感じてきたことや学んできたことを伝えることで彼が成長することが、自分たちの思いの集結だから。村上がその思いを受けて学び、ますます飛躍したとき、今以上の輝きをみせるだろう。

(新保友映 / Tomoe Shinbo)

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