【U-18W杯】侍J最強投手陣も国際大会で露呈した課題 惨敗の裏にあった曖昧さと不透明さ
何度も肩を作っては…登板せず、佐々木の緊急降板は前日の投げすぎだった
そのため、投手の起用はスクランブル。日本を代表する投手陣が揃い「どんな状況で適応する能力が必要」と言われればそれまでだが、ブルペンでは数人が慌ただしく肩を作る場面が多く先発、リリーフ、抑えと役割がはっきりしないまま出番を待つ投手が多かった。何人かの投手が試合後「作るタイミングが難しかったですが…」と口にしていた。肩を作ってはベンチに戻り、また作って、起用されず。前日でブルペンでたくさん肩を作った投手が次の試合で登板し、ボールに力がなかったり……。佐々木もそれで完治したと思われた右手中指の血豆が再発。しっかりと登板の役割ができていた米国との差は明らかだった。
国際大会ならではのドタバタ劇もあった。韓国戦に敗れ自力での決勝進出が途絶えると、決勝進出の条件に注目が集まった。7日のオーストラリア戦に勝ち、台湾、アメリカが敗れれば4チームが3勝2敗で並ぶ可能性があった。WBSCのレギュレーションではまず優先されるのが当該の対戦成績だったが、4チームになった場合は急遽それは適用されずに平均得失点差の「TQB」での比較になると通達された。
それをオープニングラウンドを通じての当該チームの試合の計算か、それともスーパーラウンドの試合の計算かの明文化がなく、チームも何度も確認作業に追われた。日本のチーム関係者が「どうやったら日本は決勝に行けるの?」と試合前に報道陣に尋ねるほど。チームはそれがわからないまま、豪州戦に入って行った。試合に負けた直後に永田監督はTVインタビューで「明日も試合がありますので」と口にしてしまったのは、その不透明なルールのせいだった。
守備の不安定さも露呈した。一番の敗因は8試合で9個あった失策だ。7失策が内野手。本職が遊撃手を多く集めたが、一塁手が本職の選手はいない。失策には表れないミスも多くあった。選手は20人しか選べない。その中でどこを優先するかで偏りが出るのは仕方がない。
投手もできて、複数ポジションができる選手が主に選ばれたが、野手で出場した試合に打者でも出る西や宮城にかかる負担は大きかった。2人は本当によく頑張った。だからこそ、もっと心の準備をする時間を与えて、よりよいパフォーマンスを発揮してほしかった。メンバー選考は多くの日本高野連スタッフ、首脳陣が長い時間をかけてやってきた。今回の敗戦を糧にしなくてはならない。
すべてに共通するのは「曖昧さ」「不透明」「戸惑い」。これを監督、スタッフ、コーチ、選手が感じていた。明確にできないとまだまだ日本のこの世代が世界一になるのは遠い。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)