オリオールズの名捕手、アンディ・エチェバレン氏死去 66、70年に世界一

オリオールズなどで活躍したアンディ・エチェバレン氏【写真:Getty Images】
オリオールズなどで活躍したアンディ・エチェバレン氏【写真:Getty Images】

酒に酔ったフランク・ロビンソンがプールに転落、救出したエピソードも

 1960年代後半から70年代にかけて、オリオールズで正捕手として活躍したアンディ・エチェバレン氏が10月5日死去した。76歳だった。

 エチェバレン氏は1943年6月、カリフォルニア州に生まれる(以下敬称略)。高校卒業後の1961年シーズン開幕前にボルティモア・オリオールズと契約。翌1962年の9月26日のカンザスシティ・アスレチックス戦でメジャー昇格。先発マスクを被り、これもメジャーデビューとなる左腕デーブ・マクナリーの初登板完封勝利の捕手となった。マクナリーは、後年、4年連続20勝を挙げるエースになる。

 エチェバレンは翌年、シカゴ・ホワイトソックス傘下に移籍したが、1964年にオリオールズに復帰。再びメジャーに昇格したのは1965年だった。

 翌1966年には正捕手に抜擢され、オールスターにも出場。名将ハンク・バウアー率いるこの年のオリオールズは、97勝63敗でリーグ優勝。一塁ブーク・パウエル、二塁デービー・ジョンソン(のち巨人)、遊撃ルイス・アパリシオ、三塁ブルックス・ロビンソン、右翼にフランク・ロビンソン、投手陣もデーブ・マクナリー、ジム・パーマーとスター選手がひしめいていたが、エチェバレンは23歳で、強豪チームの扇の要を任された。

 この年のオリオールズはワールドシリーズでも4勝0敗でロサンゼルス・ドジャースをスイープしたが、4試合すべてでマスクを被った。このシリーズの第2戦の6回に、エチェバレンは伝説の大投手サンディ・コーファックスと対戦し、三ゴロ併殺打に倒れた。コーファックスはこの回で降板したが、シリーズ終了後、突如引退を発表。エチェバレンはコーファックスと対戦した最後の打者になった。

 この年のア・リーグのMVPは、三冠王を取ったフランク・ロビンソンだったが、エチェバレンもわずかながら得票を得ている。この年のオフ、あるパーティで、酒に酔ったフランク・ロビンソンがプールに転落、おぼれそうになったのをエチェバレンが救ったというエピソードもある。

 エチェバレンは翌年も正捕手として活躍し、オールスターにも選出された。1969年以降はエルロッド・ヘンドリクスらの捕手と併用され100試合以上出場することはなくなったが、手堅い守備でチームに貢献。1971年の日米野球では、オリオールズの一員として来日、3本塁打を放っている。

 1975年のシーズン中に、カリフォルニア・エンゼルスに移籍。1976年は正捕手としてノーラン・ライアンやフランク・タナナの球を受ける。1977年にはミルウォーキー・ブルワーズに移籍、この年限りで引退した。

 引退後、一時期野球界を離れたが、ふたたびマイナーリーグのコーチ、監督を務め、1985年にはブルワーズの一塁コーチ、1996、97年にはオリオールズのベンチコーチとして、元チームメートのデービー・ジョンソン監督を補佐した。以後も、オリオールズ傘下のマイナーで指導者として若手捕手の育成に当たった。

 15年の通算成績は、948試合2618打数615安打49本塁打309打点、打率.235、捕手以外のポジションを守ることはない生粋の捕手だった。

(広尾晃 / Koh Hiroo)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY