鷹・千賀の西武打線を幻惑した“魔術” 8回無失点の好投に隠された1球ごとの変化

キッカケは京都遠征中の練習で柳田らからもらった助言

 キッカケは8月下旬、京都で予定されていたオリックス戦が中止になった頃だったという。室内練習場のブルペンで投球練習を行っていた時、柳田悠岐や福田秀平らに打席に立ってもらう機会があった。この時に柳田らから「どんないい投手でも何回も対戦していると、同じリズムだと打ちやすくなる。マシンと一緒。少し変えるだけで打ちづらくなる」と助言を受けた。

 その後からレギュラーシーズン中でも変化を加えることに意識的に取り組んできたという。「1、2、3だったり、1、2、の、3だったり、1、3だったり」。少しずつ自分の中で感覚を掴んだ。こちらからすると、試合中にフォームを変えることは難しいのでは? フォームを崩しかねないのでは? そんな心配を抱きたくもなるが、それをよそに千賀は「意外にできるもんですよ」とあっけらかん。そして、勝てば日本シリーズ進出に王手をかける大一番で「それがハマりました」と言った。

 今季、千賀はレギュラーシーズンで5度、西武と対戦した。8月17日の対戦では1イニングで9失点を喫したこともある。千賀が柳田らから助言を受けたのは、このすぐ後だ。西武打線の怖さはイヤというほど感じており、この日も「一瞬でも気を抜いたら、一気に5、6点取られる打線」と警戒して臨んでいた。

 その中で西武打線を封じる1つの策として、少しずつフォームやリズムを変化させ、打者を幻惑した。見ているだけでは、ほとんど気付けないような変化だが、「自分の中では全然違う」という。工藤公康監督が「最高のピッチング。これ以上ない」と絶賛した千賀のピッチングには、こんな秘密が隠されていた。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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