「強くなって帰ってくる」―TJ手術、戦力外、育成契約も…オリ右腕が前向きな理由
新聞で自身の育成契約を知り「あ、そうなんだ」 福良GMはすぐさま本人の元へ
先行報道は福良GMも寝耳に水だった。当時、GMは1軍のチームに帯同しソフトバンクとのナイター戦後にそれを知った。翌日はホームでの移動ゲーム。京セラドームではなく一目散に向かったのは黒木らがリハビリを行う球団施設だった。
「選手たちはやっぱり不安に思う。朝起きて新聞を見て育成契約って知ったら本人はどう思うか。手術をして一番苦しいリハビリの途中でモチベーションなんて誰も上がらない。本人たちには『悪かった』と謝りました。ちゃんと説明して焦らず治してくれと」
黒木にもその時の言葉は胸に残っている。当時を振り返りこう答えた。
「自分の性格とかも知っているので『お前は焦ってしまうから、焦ったらダメだぞって。ゆっくり直せ』と。早く投げたい気持ちはありますがもう一度、同じことをやってしまったら意味がないので」
トミー・ジョンを受けた“仲間たち”からも情報収集は欠かせない。阪神から移籍してきた竹安はプロ入り前に同じ手術を経験、左腕の山田は2014年にメスを入れ、比嘉、東明らもトミー・ジョンではないが大きな怪我を克服し全員が再び1軍の舞台に帰ってきている。
「周りに色々経験した方もいるので、それも少しは支えになっている部分もあります。もう一回、1軍で以前よりもっと強くなってマウンドに戻る。その自信しかないですし、もう前を向くしかないですよ」
完全復活までの道のりはまだ果てしなく遠い。キャッチボールの強度を上げ、遠投、ブルペン、実戦復帰、支配下登録…。「今の目標はとりあえず早く全力で投げることですかね。まずそこからです」。最後まで笑顔は絶やさない。チームそしてファンは黒木が京セラドームのマウンドに帰ってくるのを待っている。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)