西武新施設建設に携わった広池氏は異色の経歴 一度野球を離れて広島にテスト入団
1998年ドラフト8位で広島入団、12年間プレーして248試合に登板
全日空での仕事は楽しくて充実していた。しかし「プロ野球選手になる」という子供の頃からの夢が叶わなかったことで、心のどこかに寂しい思いを抱えていた。「このままではいけない。1回挑戦しないと」という気持ちが広池さんを後押しした。そして見事に秋のキャンプで合格を掴んだが、入団は先送りになった。
「その年のドラフトで指名する選手は8人が決まっていて、テストで入ってくるなんて誰も思っていないので、枠がありませんでした。『仕方ないからドミニカに行ってこい』と言われ、向こうで1シーズン投げて再び秋のキャンプに参加しました。入団前に2回も秋のキャンプに参加しているんです。そして98年にドラフト最下位の8位で入団しました」
それから12年間、37歳まで現役を続け、貴重な左腕として通算248試合に登板した。引退後は出身地の埼玉に戻り、西武で打撃投手や副寮長、ファームディレクター補佐兼ファーム編集室長を歴任。15年から球団本部チーム戦略ディレクターを、19年から球団本部長補佐を務める。様々な角度からチームに携わってきたが、選手たちには野球ができる幸せを感じて欲しいと願っている。
「本当に野球から離れた経験がある人は、コーチを含めても意外といません。野球ができなくなった時の心境、野球のすばらしさは誰よりも伝えられると思っています。選手たちは一番好きなことをやれている。その幸せは絶対に感じなければいけない。誰よりも幸せなところにいることを自覚してほしいと思っています」
いろいろな人の話を聞いて成長してもらいたいと、新しい選手寮には選手同士がコミュニケーションを取れる場所を多く作った。「野球ができる喜びを感じながら、ここで活躍してほしい」。その思いを胸に、広池さんは第二の人生も野球に携われていることに感謝しながら、選手たちのサポートを続けている。
(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)