DeNAドキュメンタリー映像制作の舞台裏 撮影監督が明かすチームとの距離感

2年連続で公式ドキュメンタリーを手がけた辻本和夫監督【写真:佐藤直子】
2年連続で公式ドキュメンタリーを手がけた辻本和夫監督【写真:佐藤直子】

『FOR REAL』シリーズの辻本和夫監督インタビュー前編

 DeNAの2019年シーズンを追った公式ドキュメンタリー映像作品『FOR REAL -戻らない瞬間、残されるもの。-』が20日から順次、横浜ブルク13ほか全国の映画館で公開される。球団が「横浜DeNAベイスターズ」として新たなスタートを切った2012年に『ダグアウトの向こう』と題して始まった公式ドキュメンタリーシリーズは、アレックス・ラミレス監督を迎えた2016年から『FOR REAL』として生まれ変わり、シーズンを通じて間近から選手の苦悩や喜びを記録。一つのドキュメンタリー作品として、DeNAファンのみならず見る者の心を打ってきた。

 リーグ4位でクライマックスシリーズ(CS)出場を逃した2018年の無念を晴らすべく、迎えた2019年。DeNAは「Go Beyond the Limit.(限界を超えろ)」をチームスローガンに掲げ、頂点を目指した。まさかの10連敗や、横浜スタジアムで巨人のリーグ優勝を許す悔しさを味わいながらも、リーグ2位で本拠地開催権を得てCSに進出。1998年以来の日本一に一歩近づいたが、CSファーストステージで阪神に敗れ、涙を呑んだ。2015年からキャプテンを務めた主砲・筒香嘉智にとってDeNA最終年となるかもしれない、そんな可能性を秘めたシーズンで、キャプテンは何をチームに伝え、選手たちは何を感じ取ったのか――。

 自らカメラを持ち、最も近い場所からチームのありのままの姿を撮り、描き続けたのは、辻本和夫監督だ。「Full-Count」では、昨季から2年連続で作品を手掛けた辻本監督をインタビュー。ドキュメンタリー映像の舞台裏、そして辻本監督が感じたDeNAの今と未来について、前後編の2回シリーズでお届けする。まずは、前編では制作の舞台裏を語ってもらう。

 ◇ ◇ ◇

 辻本監督が『FOR REAL』シリーズの監督になったのは2018年シーズン。前身『ダグアウトの向こう』シリーズから数えて3代目の監督となる。自身にとって1作目となった昨年は、チームがCS進出を逃したこともあり、シリーズ史上「最も重い」内容となった。だが、今年の作品は重苦しい雰囲気とは一変。挫折や苦悩を味わいながらも、選手一人一人、そしてチーム全体が成長する姿が映し出されている。

 カメラはロッカールーム、ミーティング、選手が運転する車内など、ファンはもちろん、メディアでも入り込めない至近距離まで密着。春キャンプからシーズン終了後までに記録し続けた映像は、実に400時間以上にも及ぶという。ありのままを映し出すドキュメンタリー作品を撮る時、カメラは空気のような存在であるべきなのだろうか。

「ここは空気でいた方がいい絵が撮れる時もありますし、声を掛けに行った方がグッと選手の思いが出てくる時もありますし、両方必要だな、と思います。場合によって使い分けているつもりでしたが、その感覚はチームと一緒にいる時間が分からせてくれた部分がありました。この選手とはこの距離感で、とか、ここはそっとしておいた方がいいな、とか。それは2年目だからこそ、1年目よりも分かったことかもしれません」

1年目には怒鳴られたことも… 「僕は邪魔者だっていう自覚はあって…」

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