「やっと打者と戦えるようになった」 ロッテ3年目右腕が解き放たれた“球速”の呪縛

自己評価は厳しく「あんなへなちょこ球」も、消えることのない向上心

 2019年7月9日、本拠地での日本ハム戦。佐々木は1年9か月ぶりに1軍のマウンドに上がった。結果は7回を投げて1失点。チームに白星をもたらした。「本当にうれしかったです。手術が終わった後も痛みが出たり、リハビリが思ったよりも長かったんで。本当にいろいろな人に支えてもらいました」と感謝の言葉を並べる。ただ、佐々木にとって怪我からの復帰登板は、4月3日の2軍ヤクルト戦(戸田)で終わっていたという。

「そもそも1軍でそんなに投げていないので『復帰』と言われてると、逆に申し訳ないな、と(笑)。僕の中での復帰登板は戸田。そこから積み重ねて、1軍でのチャンスをもらった。チャンスを物にしたいという思いでマウンドに上がっていました」

 シーズン後半は先発ローテの一角を担った。今、自分が投げられる球で、いかに打者を抑えるか。自分でハードルを上げて自滅しないように心掛けてはいるものの、「もっといい球を投げたい」という思いは常に持ち続けている。

「今の球で満足していたらヤバイですから。あんなへなちょこ球で」

 自分に対して厳しい視点を持ち続けるのは、自分はもっとできるという自信の裏返しでもあるだろう。「もっとできると思って、もう3年経っちゃったんですけど……」と苦笑いするが、その目に力強さを宿したまま、2020年への思いを口にした。

「いい球が投げられるように。野球が上手くなりたい。本当にそこだけですね」

 就任3年目の来季は「ホップ・ステップの次、ジャンプの年にしたい」と話すように、井口資仁監督は本気で日本一を目指している。モヤモヤした3年間を糧に、25歳右腕はどこまで成長できるか。2020年、佐々木千隼が面白い存在になりそうだ。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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