明大・田中新監督が見る阪神高山の課題「必要なのはメンタル」「もう一度原点に」

中日柳は「変化球ピッチャー。スピードにこだわる必要はない」

 一方、入部当初は目立つ存在ではなかったが、4年間で一番成長を遂げた選手に、昨シーズン11勝を挙げた中日・柳裕也投手の名前を挙げる。トレーニングにより身体を大きくしたことに加え、投球の際の癖を直したことで、結果が出るようになったという。

「入ってきたときはスピードも135キロ前後で、そこまでではありませんでしたが、トレーニングをよくする子だったので、身体づくりをしっかりして、順調に身体が大きくなった。投球の際、手を下したときにロックをかける癖がありましたが、手を『すとん』と落とすようにしてから伸びましたね」

 2球団競合の末に中日に入団したが、怪我に苦しみ1年目はわずか1勝、2年目も2勝に終わった。3年目の昨シーズンは11勝と飛躍を遂げたが、今後の成長には高山同様、周りに流されずに自分のやるべきことをやるだけだと話す。

「プロでは周りが自分より速い球を投げる。それに追いつこうとしてしまいますが、それは違います。柳は変化球ピッチャーですから、自分の良さを出すことです。4年生の時は140キロ後半を出していましたが、130キロ後半くらいだった2年生の時の方が、ベース盤でのボールの勢いがありました。スピードにこだわる必要はないと思います」

 多くの教え子がプロの舞台で戦っているが、結果を残している選手ばかりではない。プロで伸び悩んでいる選手たちには「一度原点に戻ってほしい」とメッセージを送る。

「自分の一番精神状態が良かった時はどうだったのか、もう一度振り返って考えてみることが大切だと思います。それが高校なのか、大学なのか、社会人なのかわかりませんが、その時はどのように取り組んでいたのかを思い出してほしい。そして、調子が悪いときに気分が落ち込むのはわかりますが、周りの人たちへの感謝の気持ちは絶対に忘れてはいけません」

 明大の伝統である人間力野球をどんな時でも大切にしてほしいと願う田中氏。今シーズンからチームを指揮する立場となったが、やることはこれまでと変わらないと話す。

「道具やユニホームなど、進化しているものは取り入れていきますが、これまでと大きく変えることはありません。このチームは六大学で一番、私生活が成績に直結すると思っています。逆にそこさえちゃんとやれば勝てる。寮内での生活は、4年生が先頭に立ってまとめていってくれればと思います」

 昨シーズンは、エース森下を擁し春のリーグ戦優勝、全日本大学野球選手権でも38年ぶりとなる優勝を飾ったが、秋のリーグ戦は5位に沈んだ。その様子を見ていた新4年生は奮起することができるか。時を超えて継承され続ける明大の「人間力野球」に注目したい。

(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)

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