ヤクルト2軍球場が台風被害に遭った意義 「絶望的」からの復旧まで道のり

戸田球場で行われたヤクルト新人合同自主トレの様子【写真:荒川祐史】
戸田球場で行われたヤクルト新人合同自主トレの様子【写真:荒川祐史】

奥川恭伸ら新人自主トレが行われた場所は一時は野球ができる状況ではなかった

 プロ野球は各地でキャンプが始まった。ヤクルトは2軍スタートながら、注目ルーキー・奥川恭伸投手が注目を集めている。キャンプ地だけでなく、1月7日から埼玉・戸田市にある2軍の球場で始まった新人合同自主トレから、例年以上に多くのファンや報道陣が連日、訪れていた。しかし、自主トレ開始10日前までは、そこにファンが入れるかどうかさえ危ぶまれていた。なぜなら昨年10月に日本列島を襲った台風19号の影響で、球場のある河川敷は立ち入り禁止、球場へ向かう道も一部通行止めになっていたからだ。

 台風のもたらした豪雨により、当時、戸田球場はグラウンドレベルから約4メートルの高さまで水位が上昇。スコアボードの上部分を残して全体が水没し、電光掲示板や放送機器といった電気系統は壊滅した。バックネット裏の高い位置にある観戦用のベンチも水に浸かり、用具庫に入れていた選手のバットやグラブ、スパイクなども汚泥にまみれた。

 なぜ、この場所がこれほどまで浸水したのか。それには理由がある。戸田球場のある場所は『荒川第一調節池』と呼ばれ、荒川が洪水の際、意図的にそこに水を流し込んで、周辺や下流の地域が浸水被害にあうのを防いだり、反対に渇水の際等、人工の湖に水を貯めて水道用水を補給したりといった重要な役割を担う、人工的に作られた重要な場所だからなのだ。

 荒川第一調節池が洪水の際に貯めることのできる水の量は3900万立方メートル。台風19号の際にこの場所が貯めたのは、過去最大のおよそ3500万立方メートルであったことから、今回、どれだけの大雨が降り、同時にここが、それらの水が下流域に流れ込むのを防いで、被害を最小化するのに役立ったかがよくわかる。

 チーム運営部次長で2軍総務兼寮長の熊田智行さんに、当時の状況と復旧への道のりを改めて伺った。台風が上陸し、甚大な被害を球場施設にもたらした時は宮崎でフェニックスリーグが開催されており、普段は寮で生活している若手選手をはじめ、寮長、用具係ら皆が宮崎に滞在していた。そのため球場管理に関わることのできるスタッフは、実は誰もいなかったのだ。

 球場の水が引いたのは台風から3日後。さらに4日ほど経って、やっと市から許可が下り、グラウンドに入れたが、全面汚泥に埋め尽くされ、公園という場所柄、トイレも多数あるため、臭いも酷かった。球場のネットには近くの釣り堀等から流れてきた魚が大量に引っ掛かって取れず、それをカラスや野良猫が食べに来て対処もできないような状態で、一時は絶望的な気持ちになったという。

選手たちの用具も被害に、原因の一つは菌の付着、熊田寮長も“注意できたはず”と反省

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