王貞治氏、野村克也さんの死去に沈痛「悪戦苦闘して戦い抜いた戦友。まさか、と」

ソフトバンク・王貞治会長【写真:福谷佑介】
ソフトバンク・王貞治会長【写真:福谷佑介】

現役時代からライバル関係、野村さんの“ささやき戦術”は「なんかブツブツ言っていたね」

 ソフトバンクの王貞治球団会長が11日、南海(現ソフトバンク)などで活躍し、ヤクルト、阪神、楽天で監督を務めた野村克也さんが死去したことについてコメントした。現役時代からライバル関係だった野村さんの訃報に接し「本当に同じ時代を悪戦苦闘して戦い抜いた戦友なので。カネさん(金田正一氏)、ノムさんが亡くなってしまうのは本当に残念なこと。カネさんと昔話をしてほしいね。ご冥福をお祈り致します」とコメントした。

 野村さんは戦後初の3冠王に輝くなど歴代2位の657本塁打をマーク。王会長とは現役時代からライバル関係で、野村さんは「王や長嶋がヒマワリなら俺はひっそりと日本海に咲く月見草」と例えていた。王会長は現役時代を振り返り「パ・リーグとセ・リーグということで、シリーズ、オープン戦でしか一緒に野球をやることはなかったんですけど、僕が本塁打を打てるようになってからは野村さんの家にお邪魔したりして、色々とご馳走になったり、野球の話をしたりした。そういう点では案外、交流はあった方じゃないですかね。野村さんも楽しそうにしてくれたんじゃないかな」と語った。

 野村さんは現役時代、打席に立つ王会長らの集中力を切らすために“ささやき戦術”を用いた。王会長は「なんかブツブツ言っていたね。その時は聞こえるけど、それを聞いているようでは打撃はできませんから。長嶋さんも声をかけられていたみたいだし、張本も。みんなそうだったと思う。それに引っかかっているようでは結果は出せないから」と懐かしんでいた。

 監督時代には緻密なデータを用いて名将として活躍。監督としても戦った王会長は「すごい頭の野球をやってましたよね。今から前に進めるにはどうするかを考えていた。我々は感覚的な野球でやってきたけど、ノムさんは感覚プラス頭脳的な野球をやった。だから選手としても監督としても成功したんじゃないですか」という。

 最後に会ったのは、先月20日に行われた通算400勝投手・金田正一氏の「お別れの会」だった。「お互いに最初に聞くのは『体調はどうだい』と。車椅子ではあったけど、元気そうだった。やっぱり野球に対する意欲は強いから。野球への思いがあるうちは体も調子がいいので。今朝聞いた時には『まさか』というのが正直な気持ち。私も戦ってますけど、ある程度の年齢になってくると、自分の中で葛藤があって戦っているんで。やっぱり野村さんの中でもそういうのがあったんじゃないですかね」と戦友の死を惜しんだ。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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