「42歳なんて全然大したことない」―中日山井が示す意地 虎福留の言葉で得た“正解”

中日・山井大介【写真:小西亮】
中日・山井大介【写真:小西亮】

自身の調整に余念の無い大ベテランは「キャンプは時間が足りんな」

 時間にして数分。スタッフら関係者がせわしなく行き交う球場の正面入り口付近で、2人は立ち話をしていた。2月22日、沖縄・北谷球場で行われた中日-阪神のオープン戦でのこと。今季の実戦初登板を終えたばかりの中日・山井大介投手は、3打席を終えて途中交代した阪神・福留孝介外野手と向き合っていた。

 テーマは、強い真っすぐだった。阪神打線に対し、2イニングで2本塁打を含む5安打4失点。「10球投げて1球もいってないくらい」と山井自身でも痛感していたが、打者目線からも確かめておきたかった。「3番・DH」でスタメン出場した福留とは2打席対戦して、四球と右飛。1球だけ手応えのある直球がいった感覚に対し、球界最年長になった元同僚の先輩からは「あれは良かったな」との言葉が返ってきた。「自分が思っている感覚は正しいんやなって」と答え合せができた。

 福留の1学年下の山井にも、気がつけば「球界最年長投手」の肩書きがついた。プロ19年目、42歳を迎えるシーズン。「周りがそう言って背負わすだけで、全く意識なんてないよ」。50歳まで現役を続けた山本昌氏や、プロ野球史上最多1002試合登板を果たして2018年に引退した岩瀬仁紀氏ら「レジェンド」たちが、つい最近まで間近にいただけに「42歳なんて全然大したことないって」と笑い飛ばす。

 年齢で野球をしているわけではない。大先輩たちの姿から「野球に対する欲」を感じ取ってきた。「最年長」となった今、全く同じ思いが自らを突き動かしているという。「まだ上手くなりたいし、勝ちたい」。14年に13勝5敗の成績で最多勝と最高勝率のタイトルを獲得して以降、この5年間ではわずか通算13勝。それでも貪欲さは増すばかりだと言う。「最多勝をした時よりも勝ちたいを思ってシーズンに入ってる」。若手に負けじと、目はギラついている。

 もちろん加齢を感じることも多い。「シーズンに入る気持ちの作り方が難しくなってきた。オフの12月半ばくらいからピリピリし出して、いよいよ新しい年が始まるんやって気持ちを持っていかないと」。2月1日にユニホームを身にまとえば、ベテランも若手も関係ない競争に身を置く。余念のない体のケアはもちろん、経験値によって増えた引き出しを色々と試したい。「キャンプは時間が足りんな。もう2週間くらいほしいわ」と苦笑する。

 オープン戦2度目の登板となった3日のナゴヤ球場での西武戦。5回から登板して2イニングで5安打4失点と再び精彩を欠いた。先発の一角を目指す身として、置かれている立場はなかなか厳しい。それでも、不惑を過ぎた右腕は、投げることで存在を証明するほかない。「気持ちが切れたら終わり」。最年長投手ということ以前に、「投手・山井」として示さなければいけない意地がある。

(小西亮 / Ryo Konishi)

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