名遊撃手のロッテ鳥谷「指示された所を守る」一塁ミット発注に滲む不退転の決意

3番・三塁でスタメン出場したロッテ・鳥谷敬【写真:宮脇広久】
3番・三塁でスタメン出場したロッテ・鳥谷敬【写真:宮脇広久】

日替わりで遊撃→三塁→二塁「今まではなかなかなかった」

 前阪神でロッテに入団した鳥谷敬内野手は17日の2軍練習試合・巨人戦(ロッテ浦和)に遊撃手、翌18日の同カードには三塁手として出場。さらに19日の同カードでは二塁を守る予定だ。井口監督が獲得にあたって「内野は全部守ってもらいたい」と要望していた通りの起用法となっている。

 鳥谷が18日の試合後、2年ぶりに守った三塁について「感覚がすぐに戻るかどうかはわかりませんが、(サードは)元々すごい感覚があってやっていたわけじゃないので……」とクールに語り、「日替わりでいろいろなポジションをやるというのは、今までなかなかなかったことなので、体調面なども感じながらやっていきたい」と口にした言葉の端々に、心なしか複雑な思いがにじんでいた。

 鳥谷がゴールデングラブ賞を4度獲得している遊撃守備に誇りとこだわりを持っていることは、親しい関係者の見解が一致するところだ。打撃不振に悩んだ2016年の9月には北條の台頭もあり、当時の金本監督の方針で三塁にコンバートされたが、翌17年の春季キャンプでは遊撃のポジションを巡り北條との競争を直訴した。これまで、公式戦では遊撃手として通算1761試合に出場。三塁は217試合、二塁に至っては28試合(全て18年)に過ぎない。

 一方で、幸か不幸か、鳥谷には“やれば、こなせてしまう”器用さがある。結局三塁を守った17年、その不本意なポジションでオールスターにファン投票で選出され、ゴールデングラブ賞も受賞してしまった。また、13年ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の日本代表では、遊撃に巨人・坂本がいた事情などから、当時公式戦で守ったことがなかった二塁で主に起用され、プエルトリコに敗れた準決勝では「1番・二塁」でフル出場した。

 胸の内はともかく、16年間在籍した阪神を自由契約となり、1軍最低保障額の年俸1600万円で契約したロッテでは、なりふり構わず「指示された所を守るのが、今の自分の仕事」と認識している。「これまで一塁だけは守ったことがない」にも関わらず、ファーストミットを発注したのも決意の表れだ。実際には、今岡2軍監督は「現段階で、井口監督から(一塁を守らせろとの)指示はない」と語っており、“ファースト・鳥谷”が実現するかどうかは微妙だが、守れるポジションが1つでも多い方が、出場機会を得やすいのは間違いない。いまだ2軍調整中の身でありながら、38歳のレジェンドは新天地で日に日に存在感を増している。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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