「これで投手を続けられるなら…」 斎藤雅樹氏、野手転向寸前に届いた“天の声”とは

今季サイドスローに変えた鍬原を高く評価「左の好打者が揃った楽天を抑えていた」

 サイドスローへの変更といえば、今季の巨人では3年目の鍬原拓也が辿っている道だ。2017年ドラフト1位右腕は中学時代までサイドスローで投げていたという。入団後、思うようなピッチングができず、昨年の秋季キャンプから“再転向”に踏み切った。この春は当初はサイドスローだったが、練習試合の頃にはスリークォーターに近い位置で落ち着いた模様。斎藤氏は「自分にとっていい位置を探せばいい」とアドバイスを送る。

「鍬原の場合、最初は僕くらい横から投げようと思っていたみたいだけど、最近は少し上がってスリークォーター気味でしたね。あそこが彼にとって腕が強く振れる位置なんだと思います。彼が見つけた位置。それでいいと思います。ただ、フォームを変えた時は当然、日によって今日は腕が下がった、今日は上がったと変わってくる。それを自分で判断できるようにならないと調整が利かなくなるんですよ。

 僕の場合はカーブが指標でしたね。カーブの軌道が少し縦の時は腕が上なのかな、抜ける球が多い時は腕が下がっているのかな、あるいは手首が寝ているのかなって。鍬原もこれから日によってしっくり来ない日があると思うので、自分の中で指標になるものを作っておくと試合中にも修正が利くのでいいと思いますね」

 OBとして解説者として、巨人の試合をまめにチェックしている斎藤氏は、3月14日楽天戦の登板を見て、鍬原がサイドスローとして持つ才能に驚かされたという。この試合で先発した鍬原は、6回途中を3安打9奪三振2失点と好投した。

「基本、サイドスローはどうしても左バッターと相性が悪い。球の出どころが見やすいのがあるから、左バッターを抑えることが課題になります。でも、左の好打者が揃った楽天を真っ直ぐでインサイドをガンガン突きながら、シンカーを上手く使って抑えていたでしょ。シンカーは上から投げている時も武器だったけど大きいですね。僕も左対策でシンカー系の球を覚えるように、王(貞治)さんに散々言われました(笑)。僕が投げるとなると対戦相手は左バッターを並べてくるから、対戦も多くなるし、打たれるのは当たり前。でも、見ている人は『左にばっかり打たれて……』ってなるんですよ(笑)。散々言われてシンカーを覚えたけど、最後まで信頼できる球ではなかったですね」

 斎藤氏がうらやむ真っ直ぐとシンカーを持つ鍬原。サイドスロー転向で花を咲かせた大先輩に続き、今年は才能を開花させる年にしたい。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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