先発は救援よりどれくらい難しい? データで見える「1.25」という数字の差

先発と救援両方を経験した投手の成績の変化から見ると…

 表面上の数字を見ては実態にたどり着けないのであれば、どのような方法をとればよいだろうか。現代野球において先発と救援は分業されているが、シーズン中に両方の役割をこなす投手もいる。彼らの先発・救援成績を比較すれば、前述したバイアスを除いた上で、難易度の差を求めることができるのではないだろうか。

●対象年度:2015-19年(注3)
●対象者:同じシーズンに先発・救援の両方で打者30人以上と対戦した投手

 ここでは上記の条件を満たした投手を抽出し、先発・救援成績を比較することにした(注4)。なお「まず先発挑戦させて駄目だったため以降は救援」といった生存バイアス、「本職は先発だがチーム事情で短期間だけクローザー」のような適性によるバイアスを最低限弾くため、先発・救援どちらかの対戦打者が他方の3倍以上あった選手は除外している。

 この条件で抽出された投手の1人、2019年の安樂智大(楽天)の成績を例に比較の方法を説明する。2019年の安樂は先発として21.1回を投げ自責点14(防御率5.91)、救援として11.0回を投げ自責点3(防御率が2.45)だった。この場合先発・救援間で防御率の差は3.45となる。このように条件に当てはまった投手の投球回、自責点をそれぞれ合計していくことで、妥当な先発と救援の防御率差を出すことができるのではないだろうか。

先発・救援成績比較の算出イメージ【表:DELTA】
先発・救援成績比較の算出イメージ【表:DELTA】

 ただ安樂の場合、救援での対戦打者はわずか46人。サンプルとして十分ではなく、先発と救援での防御率差3.45が信頼に足るものとは言えないだろう。先発の防御率が悪く出すぎている、救援の防御率が良く出すぎている可能性は十分考えられる。

 こうした問題に対処するため、より対戦打者が少ないほうにあわせて成績に重みをつけたうえでサンプルを収集することにする(加重成績)。安樂の場合、先発で91人、救援で46人と先発で約2倍の対戦数があったため、先発での投球回・自責共に半分の10.2イニング、自責点7として集計するのだ。これによって対戦打者が少ない投手の影響を小さく抑え、比較を行うことができる。同じことを同条件の投手全員で行ったあと、それぞれの加重成績を合算すると、より妥当な先発・救援の難易度の差が生まれるはずだ。

救援での防御率+1.25とすれば、妥当な先発での成績になるか

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