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自分じゃない自分へ 10か月で球速10キロ増、ドラ1候補・伊藤大海の“浪人生活”

野球がやりたくても、自分たちの思うようにできない。苫小牧駒大のエース右腕で今秋ドラフト候補の伊藤大海投手(4年)は以前と同じような思いがあったから、この“国難”を乗り越えられる自信がある。150キロを超える直球と強い身体を手に入れたのは、試合に出場できなかった約10か月の“浪人生活”の時期があったからだった。

期待感を持って我慢した投球練習、久しぶりのブルペンでは衝撃が走った

 満足のいく体で動けているのに試合に出られない。つらい時期ではあったが、それ以上に自分自身に期待ができたから乗り越えられた。「ある意味、楽しみだなと思えました」と前向きな思考が支えた。キャンプが終わった後は自分で考えて練習メニューを組んだ。午前中は大学で、午後は母校の高校で施設を借り、練習をした。

「完全に野球漬けです。本を読むことも多かったですね。自分の感覚を大事にしていました。試合には出られませんでしたが、気分転換もできていました。今は考えられないですけど、1日中、外で野球をしていたという感じで楽しかったです」

 2017年夏、満を持して、ブルペンのマウンドに上がった。指先にかかったボールが捕手のミットに勢いよく収まった。あの時のことは忘れられない。

「『衝撃が走る』というような感じでした(笑)。球速のアップの仕方もわからなかった自分が、150キロのスピードが出るようになりました。自分がそれまで、ピッチングに対する考え方、未熟だったと感じました。キャッチボール1つとっても、一球に対する考え方、取り組み方がまだまだ甘かったです」。

 オープン戦などで実戦を積み、翌春に北海道六大学リーグ戦デビュー。6勝0敗でチームを優勝に導く大車輪の活躍。もう打たれる気はしなかった。全日本大学選手権にも出場した。別人のように生まれ変わったその活躍は鮮烈で、大学ジャパンにも選出された。球速を上げて、大学日本代表に選ばれること、そして目標のプロへ――。目指すべきところへの段階は上がっている。

 高校や大学で自分のやりたい野球の適合性で、環境を変えるケースはよくあり、成功例も多くある。伊藤がやり遂げてきたことには芯があった。自分をしっかりと見つめ直すことも大事だったが、楽しみを見出しながら、日々を過ごした先に答えがあったのかもしれない。

 伊藤は今、積極的に自分の体験をSNSやYouTubeで動画をアップし、小中学生ら子供たちや保護者、指導者らに野球の技術をアドバイスしている。

「今日もこの後、動画をあげる予定ですが、家でできるトレーニングとかを紹介しようかと。ツイッターで来た質問にもできるだけ答えようと思っていますが、重複する疑問もあるので、動画で見てもらえたらと思っています」

 少しでも野球が上手になってほしい。可能性を信じて野球を続けてほしい――約1年の“浪人生活”を送ったが、それは伊藤にとって力を貯めた“10か月”だった。

◇伊藤大海(いとう・ひろみ)1997年8月31日生まれ、北海道鹿部町出身。176センチ、82キロ。右投左打。鹿部小で「鹿部クラップーズ」で野球を始め、駒大苫小牧では1年秋に初ベンチ入りし14年の選抜、創成館戦(長崎)で3安打完封勝利。駒大進学も1年秋に退学し、17年春に苫小牧駒大入学。2年春に公式戦デビューし、無傷の6勝でリーグ優勝し全日本大学選手権出場。2、3年時に侍ジャパン大学代表。ツイッターのアカウントは(@hiromi151)。

(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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