23歳で他界した親友と迎える7月4日… 中日・京田が開幕戦ではめたグラブと約束

同じ久保田スラッガー製、同じ担当者だった不思議な縁

 快く受け入れてもらい、今シーズン使う予定だったグラブが間もなく出来上がると聞いた。奇しくも、同じ久保田スラッガー製のグラブだった。すぐにメーカー側に連絡すると、京田も中井さんも同じ担当者だということが分かった。見たことも触ったこともないグラブを注文し、届いたのが6月18日の夜。3か月遅れの開幕戦を翌日に控えたナイター練習の時だった。

 表面には中井さんの背番号「6」と、岸和田だんじり祭の町紋が刺繍されていた。愛用のグラブと比べて一回り小さく、捕球面は狭い。ウエブの形状も異なる。ただ、皮はすでに柔らかく慣らされ、いつも通りの型付けが施されていた。

「唯一無二のグラブです」。メーカー担当の小川久範さんにとっても特別な思いがあった。「中井君は大学時代からお店に来てくれていて、僕にとっても思い入れのある選手だったんです」。主人を失ったはずのグラブに、光が当たる。「京田君が扱いやすいように調整してあります。でもまさか、すぐに試合で使うとは思ってもみなかったです」。

 通常ならオフシーズンに新調し、キャンプやオープン戦を通してグラブに慣れていく。ましてや、守備の負担が最も大きい遊撃手。いくら型付けしているとはいえ、すぐに公式戦で使うことはタブーにも近い行為だった。チームメートからは当然、心配された。自分だけの試合じゃない。ともすれば、独りよがりにも見える。それでも、京田には確信があった。

「僕にできることがあるとすれば、諒の分まで、明日を一生懸命に生きていくこと」

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