史上初の20代で300犠打 鷹・今宮が遂げる“非バント”への変貌

ソフトバンク・今宮健太【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・今宮健太【写真:藤浦一都】

「バントをしないことが1番いい」と打力向上を目指してきた今宮

■ソフトバンク 4-1 日本ハム(3日・札幌ドーム)

 史上7人目となる偉業を達成した。3日、札幌ドームで行われた日本ハム戦。ソフトバンクの今宮健太内野手が史上最速、そして史上初となる20代での通算300犠打を達成した。プロ11年目、通算1067試合での達成は、歴代のバントの名手よりも速く、若かりし頃からチームのために小技を堅実に決めてきた今宮の“勲章”とも言えるものだろう。

 2点リードの7回だった。先頭の栗原が右前安打を放ち、打席に今宮が入った。ベンチから出されたサインはバント。昨季終了時点で大台到達まであと1つの299犠打。実は今季13試合目にして、今宮に出された初めてのバントのサインだった。これをキッチリと決めて史上7人目の快挙を達成した。

 2009年のドラフト1位で明豊高からソフトバンクに入団した今宮。3年目の2012年に1軍に定着すると、主に“繋ぎの2番”として犠打を数多く決めてきた。2013年、2014年には2年続けてパ・リーグ記録となる62犠打を達成。超ハイペースで犠打数を積み重ね、そのペースでいけば、“バントの神様”川相昌弘氏の533犠打の更新も十分に可能と見られていた。

 ただ、本人の胸の内には別の思いがあった。高校時代は通算62本塁打を誇るスラッガー。心のどこかには打ちたい思いがあった。2017年に自身最多の14本塁打を放ち、バッティングの成長が見られた。2018年には怪我での離脱もあったことから、前年の半分以下の22犠打に減ると、昨季はたった7つ。そして、今季はこれが初めての犠打だった。

 もちろん、今宮のキャリアを語る上で、バントなしでは語れない。ただ、その一方で、これまでにも今宮は「バントをしないことが1番いい」と口にしてきた。オフもバッティングの向上に力を注ぎ、今季もチームの中で打撃で結果を残している1人だ。理想は打って、走者を進められる打者。記念すべきこの300犠打も、期待される川相氏超えの犠打記録も、今宮自身にとっては目指すべきところではないのだ。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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