米国と比べて日本でスイッチヒッターが少ない理由は? 目から鱗の両打ちの歴史

スイッチヒッターとして活躍した松井稼頭央氏【写真:荒川祐史】
スイッチヒッターとして活躍した松井稼頭央氏【写真:荒川祐史】

“元祖”は左右投手への対応ではなく、野手の守備範囲を避けるために始めた

 スイッチヒッターとは、左右両方の打席で打つ打者のことだ。野球のルール上、打者は打撃中に左から右、右から左へと何度でも打席を変更することができる。一般的に右打ちの打者は左投手に強く、左打ちの打者は右投手に強いといわれ、両打ちは左右両方の投手に対応できるため有利だというわけだ。

 アメリカでは19世紀半ばにはすでに両打ちの打者が存在していた。1860年代からブルックリン・アトランティックスやニューヨーク・ミューチュアルズでプレーした内野手、ボブ・ファーガソンがスイッチヒッターの最初の一人だとされる。ただし、当時の野球界には左投手はほとんどおらず、そもそも当時の投手は下手投げだったので左右の別はあまり意味がなかった。右打者だったファーガソンは左投手に対応するためではなく、のちに殿堂入りした名遊撃手ジョージ・ライトの守備範囲に打球が飛ぶのを避けるために、左打席に立ったといわれている。

 投手が上から投げるようになってからはスイッチヒッターも次々と登場。1889年にはボルティモア・オリオールズのトミー・タッカーが打率.372でスイッチヒッター初の首位打者になっている。MLBを代表するスイッチヒッターといえば、ミッキー・マントルとピート・ローズということになるだろう。マントルはジョー・ディマジオの次のヤンキースの4番として、本塁打王4回、打点王1回、首位打者1回。1956年にはスイッチヒッター唯一の3冠王にも輝いている。ローズはMLB史上最多の4256安打を記録。首位打者2回、最多安打を7回記録している。

 MLB記録サイト「Baseball Reference」では2人の左右両打席での打撃記録を公表している。

○ミッキー・マントル
左打席 5282打数1484安打372本塁打1007打点 打率.281
右打席 2763打数912安打162本塁打491打点 打率.330

○ピート・ローズ
左打席 10051打数3083安打119本塁打937打点 打率.307
右打席 3995打数1171安打41本塁打376打点 打率.293

 両打者ともに左打席のほうが圧倒的に多いのは、右投手との対戦が多いためだ。なお、マントルは右投手に対し右打席に立ったことが2回、ローズは左投手に対して左打席に立ったことが1回ある。3000本安打以上のスイッチヒッターでは、ローズの他にエディ・マレー(3255安打)がいる。

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