「抑えるの諦めていた」 日米通算234Sの守護神が戦った2000年代の強打者は?

日米通算234セーブを挙げた小林雅英氏【写真:編集部】
日米通算234セーブを挙げた小林雅英氏【写真:編集部】

現役引退後は投手コーチ、見つけたメンタル弱者の“共通点”

 手を抜くわけではないが、「彼に力を注ぐより、どうせ打たれるなら、注がないで打たれた方が次の打者に集中できる。一生懸命投げずに、抑えられればラッキー。最初からあきらめていれば、ヒットを打たれても苦にならない」と考えるようにした。松井氏は足も速いので「どうせ盗塁もするよね? ランナー二塁から始めましょ」とまで覚悟していたという。松井氏に打たれた上に走られ、心を折られた状態で中軸のカブレラ氏や和田氏を迎える方が、“被害”が大きくなると考えていた。

 重要なのは小林氏が、打たれてもやむをえない打者と、比較的抑えやすい、絶対に抑えなければならない打者を明確に分けて認識していたことだろう。小林氏は現役引退後にオリックスで3年間、ロッテで4年間コーチを務め、「『僕、メンタルが弱いんです』と言う投手には共通点がある。1、自分なりのプランがない 2、失敗の許容範囲をつくっていない──の2点。だから四球を1つ出しただけで、次の打者に向かう時に、どうしよう、どうしようとバタバタする」と気づいた。

 そして、ピッチングの極意を「何かしら『こうしよう』とはっきりした考えを持って打者と対戦していくこと。『どうしよう』というマイナス思考はダメ。『こうしよう』と『どうしよう』は、1字違いで大違いです」と表現する。

「どうしよう」ではなく「こうしよう」……体格、能力に恵まれながら殻を破れずにくすぶっている数多くの選手たちに、小林氏の思考法を教えてあげたい気がする。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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