自力V消滅の阪神に足りない「執念」 藪恵壹氏が指摘する「気迫」と「作戦負け」

7回の得点機にバントをせずにバスターエンドラン「そこで作戦負け」

 もう1つ、藪氏が「必死さが見られなかった」と指摘する場面がある。それが7回表だ。

 2点勝ち越された直後の攻撃で、阪神打線はチャンスを掴む。巨人の2番手左腕・高梨は制球が定まらず、阪神は内野安打と四球で無死一、二塁と絶好機を迎えた。ここで打席に立ったのは、最近2番で起用される捕手の梅野だった。藪氏の解説を聞いてみよう。

「ここは初球にバントのサインが出ていたと思います。でも、初球は外角ツーシームでボール。これで矢野監督はサインをバントからバスターエンドランに変更しました。器用な梅野選手なら空振りしない自信もあったんでしょう。でも、結果は2球目内角スライダーを空振りしてダブルスチール失敗。1死二塁となり、梅野選手は結局、二塁ゴロ。続く糸原選手もショートゴロで1点も返すことができませんでした。

 バントで確実に送っておけば、1点は返せたかもしれない場面。1ボールから1回バントをやりにいってファウルしたらバスターエンドランに切り替えても遅くはなかった。そこで作戦負けしてしまいました」

 この日、巨人の投手陣は決して状態がいいわけではなかった。開幕から11連勝を飾った菅野は「全然良くなかったですよ。近本選手に2発打たれて、5回が終わった時点ではフラフラでしたよ」と藪氏。2番手の高梨は制球に苦しみ、守護神デラロサも1死一、二塁から失点しそうな場面で吉川尚の好守に助けられた。だが、相手の弱みにつけ込めなかった阪神。「勝利への執念で負けていたということですよ」と手厳しい。

 自力Vこそ消えたが、残り47試合。貪欲に、そして勝利への執念をむき出しにすれば、まだ何が起こるか分からない。ここからの戦い方こそ、チームの真価が問われるのかもしれない。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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