エース菅野が打たれても巨人が勝った理由 藪恵壹氏が分析「際での強さの差」

巨人・原辰徳監督【写真提供:読売巨人軍】
巨人・原辰徳監督【写真提供:読売巨人軍】

阪神は5回まで1点リードも、勝負の際で粘り切れず

■巨人 6-3 阪神(15日・東京ドーム)

 巨人は15日、本拠地での阪神戦に6-3で勝利し、リーグ優勝マジック38を点灯させた。エース・菅野智之投手は6回を2被弾を含む7安打5奪三振3失点と決して状態は良くなかったが、打線が援護。1938年のスタルヒン以来、82年ぶりとなる開幕11連勝の球団記録を達成した。

 一方の阪神は5回まで3-2と1点リードしていたが、6回に3年目左腕の高橋遥人投手が4連打されて降板。この回に3点を奪われて逆転されると、8回にも1点を献上して東京ドームで7連敗となった。

 途中までは一進一退の攻防が続いた試合だが、勝負の分かれ目となったポイントはどこにあったのか。阪神OBでメジャー右腕の藪恵壹氏は「守備力と際(きわ)での強さの差」にあると分析する。

 阪神が3点を追う9回表。巨人の守護神デラロサは決して本調子ではなく、先頭・中谷に左前打を許すと、1死後に代打・陽川に四球を与え、1死一、二塁とした。ここで、この日2本塁打を含む3安打の近本が二遊間を抜けそうな打球を放ったが、二塁守備に就いていた吉川尚が好キャッチ。二塁で封殺し、ピンチを凌いだ。

「最終回の守備を見ても分かるように、今日の勝敗の差は守備力の差にあったと思います。巨人は細かいミスが少ないし、アウトにすべき場面でしっかりアウトを取る。それに対して、阪神は4回無死二塁から丸選手のセンター前ヒットで、二塁走者だった岡本選手に生還されました。あそこはセンターを守る近本選手は、岡本選手を余裕でホームに帰してはいけない場面ですよ。

 6回に先頭・松原選手に二塁打を許した場面でも、あそこはライトに守備固めで入った中谷選手がいいプレーをしたけれど、結果的にはアウトにできなかった。それでは意味がない。やっぱり打球への寄りが少し遅かったし、二塁上でのタッチも甘かった。そういうボール際、ベース際の際(きわ)で負けていましたね」

 両チームの守備力の差は、この試合に限ったことではない。前日までのチーム失策が巨人は16、阪神は53と3倍以上の差がついている。藪氏は「毎日の積み重ねが、こういう大事な時に出てくるもの」と話す。

 両軍ベンチの「勝負際に対する強さの差」も、この一戦には見えたという。6回裏、1点を追う巨人は松原の右翼線二塁打をきっかけに4連打と畳みかけ、先発の高橋を降板に追い込むと、1死満塁から大城が右翼へ2点タイムリーを放ち、逆転に成功。すると、7回表から坂本、岡本といった主力をベンチに下げ、若林、吉川大を起用した。その後も原監督は増田、北村、田中ら若手を積極的に試合で使った。

「原監督は勝ちながらも若手を育てたい想いがあるから、少しリードしている場面で積極的に若手を起用します。それは試合の前半で主力がしっかり仕事をするからできること。巨人はベンチ入りしている選手全員がコマとしてちゃんと生かされていますね。阪神は采配の差、作戦の差、勝負際での差も、この試合では見せつけられた形になりました」

 この日の勝利で2位・阪神とのゲーム差は10.5に開き、マジック38が点灯した巨人。まだ40試合以上を残すが、このまま独走で優勝を決めるのか。あるいは、2位・阪神以下の5チームが意地を見せ、マジックを消してみせるのか。ペナントレースはいよいよ終盤へ差し掛かる。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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