元巨人・鈴木尚広がリスタートに選んだ場所は? 「農業」と「野球」共通の魅力

農業と並行にしてやってきたことはトレーニングの指導とオンラインの施策

 自身の現役時代の背番号12に合わせ、9月12日の正午(12時)からは、公式YouTubeチャンネル「Swiftrunner」をスタートさせた。そこでも農業の魅力や自身が今後伝えていきたいことを語っている。プレオープンから公開1回目の12日終了時で、一つの目安であるチャンネル登録数は、1000人を突破するなど、注目度の高さを感じる。安易にYouTubeに手を出した訳ではなく、鈴木氏はステイホーム期間中に、箇条書きで自分に何が野球ファンや子供達のためにできるかを書き貯めて、同じ方向に進もうとしてくれるスタッフと何度も会議を重ね、制作を開始した。

「自分が培ってきたものをどうやって皆さんに伝えられるか、そういった1つのコンテンツを全部、総合して作りたいなと思っていました。あとは野球選手を育てるための手助けをできればいいと思っています。野球の人口が少なくなっていく中で、野球が身近に感じられなくなってきている。価値のある情報を伝えて、プロ野球選手を目指していく選手が増えればいいなと思います」

 鈴木氏は農業やトレーニング指導をしながら、この9月12日から始まった動画サイトのコンテンツを作っている。これからはYouTubeだけでなく、野球選手ならば怪我をしない方法、どうやったら走力が身につくのかなどの子供達らの疑問を解消するコミニティ、農業や食育の知識、トレーニング、走塁などの野球技術もオンライン指導できる場所の構築を考えている。

 ただ、前に進むためにも、巨人を応援してくれていたファンへ、自らの言葉で伝えなくてはいけないことがある。

「原監督から指名を受けて、3か月でスペシャリストを作ってほしいと課題をいただきました。選手の時はコーチの大変さに気付きもしなかったので、人を育てる難しさ、嬉しさを感じました。若い選手と一緒に汗を流し、少しずつ選手が大きくなって、結果を出し、頼もしくなっていった。こういう(退団を選択する)結果になってしまい、みんなの前で話はさせてもらいましたが、非常に選手に、ファンの皆様に申し訳ない思いでした。日本シリーズも一緒に戦いたかったというのが本当の気持ちです。応援してくださっているファンの期待を裏切ってしまいました」

 自分に大きな期待をかけてくれたファンの気持ちが痛いほど身にしみた約10か月だった。現実と足元を見つめ直すことに時間を使った。一人でも自分を必要としてくれる、応援してくれるファンがいるならば、それに応えたい。その期間に届いた声が今の原動力となっている。

「発信することで元気です、がんばります、という意思表示でもあります。YouTubeやこれから展開しようと考えているサービスで様々なコンテンツを発信し、新しい自分という姿を見ていただき、評価していただき、また応援してもらえるような選手に人間になりたいなと思っています」

 苦しみも喜びも味わった現役20年と1年のコーチ経験。一流の世界に身を置いたからこそ、感じたこと、伝えられることがある。常勝軍団で磨いた個の技術は、一般社会にも通用する考えだ。多くの引き出しを還元するために、鈴木氏は再び走り出した。

【動画】元巨人・鈴木尚広が開設したYouTubeでこれまでとこれからの思いを赤裸々に語る

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