トミー・ジョン手術で本当に球速は上がる!? 肘の権威が語る「一番の原因」は…
元阪神エースとの対談で古島医師が明かす「超サイヤ人になるわけではない」
肘の靭帯損傷などの治療法として、復帰までに約1年を要する内側側副靱帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)を受ける野球選手が近年増えている。厳しいリハビリを乗り越える必要があるものの、手術の成功率は高く、マウンドに戻って再び活躍する投手は多い。
このトミー・ジョン手術には、以前から1つの“都市伝説”がある。「手術を受けると球速がアップする」というものだ。Full-Countでは、これまで計700件以上のトミー・ジョン手術を執刀した慶友整形外科病院スポーツ医学センター長の古島弘三医師と、元阪神エースでメジャー経験も持つ藪恵壹氏のオンライン対談を行ったが、その中でもこの“説”が話題に。最近は高校生などでもメスを入れるケースが出てきている中、10月10日から全6回のコースで行うオンラインサロン「開講! 古島アカデミー」第1期をスタートさせるなど、育成年代の選手の負傷を防ぐために様々な活動にも取り組んでいる古島医師は、この“疑問”に対して明確な答えを示している。
米国では以前から、古島医師が「やり過ぎている」と感じるほど、プロ・アマ問わずトミー・ジョン手術に踏み切る選手が多い。日本よりも“ハードル”が低い理由としては、同手術に対する信頼度が高いことに加えて、やはり靭帯再建で“進化”すると考えている人が多いこともあるという。
「(手術を)受ければ球が速くなると思っている人が3、4割いるので……」と古島医師。実際に、米国では5年ほど前に野球メディアを対象に「本当にトミー・ジョン手術で球が速くなると信じているか?」という理解度を調べる調査が行われ、約4割が「YES」と答えたというのだ。この調査結果を学会で聞いたという古島医師は「メディアが間違った報道をしていた」と言い切る。
藪氏が「選手もやればボールも速くなるし、リハビリは大変ですけど、やった方が良くなるんじゃないかなっていうのはありますよね。あれ、確かに速くなりますよね。5、6キロ速くなりますよ(笑)」と投げかけると、こう続けた。
「手術をして肘が元に戻っても、超サイヤ人になるわけではないので、手術前より良くなるかといったら変わりません。ただ、リハビリ期間中に選手はすごく頑張るんです。体を柔らかくするとか、投球フォームを修正するとか。そこが(手術から復帰後に)球が速くなる一番の原因かなと思うんですよね。だから、手術でしっかり靭帯の緩みをなくしました、ということが(球が)速くなる原因ではないんですよね。リハビリで頑張ったという1年が、変わる要因になるんだと思います」
復帰後に球速が速くなるというケースは確かにあるが、それは手術を受けたことが原因ではなく、リハビリの過程での“努力”が実を結んだため。「手術で球速が速くなるわけではない」という古島医師の説明に藪氏も大きくうなずいた。
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