トミー・ジョン手術で本当に球速は上がる!? 肘の権威が語る「一番の原因」は…
故障しないために選手が「痛い」と言える環境づくりを
もちろん、まずは負傷をしないことが第一。日本では、育成年代の選手が肩・肘を酷使してしまうことで選手生命を絶たれたり、大人になってからの負傷の原因になってしまうことも。近年は球数制限などの対策も取られ始めているが、まだまだ不十分という意見もあり、選手が指導者に「痛い」と言えずに無理をしてしまう環境も残っている。
阪神で投手コーチを務めていた藪氏は「プロでも同じような状況があります」と話す。
「僕が2011年に阪神で投手コーチをした時、明らかにおかしな投げ方をしている投手に『大丈夫か?』と聞くと『はい』しか言わない。その投げ方じゃ大丈夫じゃないだろうって(笑)。プロになっても選手が『はい』しか言わないんです。だから、聞いたんです。その『はい』は何の『はい』だ? とりあえずの『はい』だろうって。そこから環境を変えるように努力しましたね。自分の意見をしっかり言うようにって」
これに古島医師も「小中学生で怒鳴られながら育つと、大人になってからも『はい』しか言えないんですよね(苦笑)。話の内容は分からなくても、とりあえず『はい』って言っておけばいいと思うんでしょう」と同意する。
「自分で自分の体を守れなければ、我慢して限界を超えて怪我を引き起こすことになります。将来のことも考えると、子どもの頃からはっきり自分の意見を主張できる選手に育つべきだと思います。藪さんも仰有っていましたが、今は大人に『いけるか?』と聞かれたら、子どもが『いけません。やめておきます』と言える環境はまだまだ少ない。自分の意見を伝えると同時に、自分で考えて動いたり、練習したりする能力がつくと、個人個人がよりレベルアップするんじゃないかと思います。そういう環境を整えてあげたいですね」
もし怪我をしてしまっても、トミー・ジョン手術がある。適切な治療とリハビリ過程での努力で、パワーアップしてマウンドに戻ってくる選手もいる。ただ、まずはできるだけ負傷する選手を減らすための環境を作ることが重要であると、忘れてはいけない。
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