「ホテルの部屋でいきなりバットを…」後輩が見た巨人・坂本勇人の凄さと魅力

お前はこのスイングするためにつけた筋肉なんだ!という雰囲気

 辻さんが初めて1軍キャンプメンバーに選ばれた3年目の春。坂本の「考える」フリー打撃に目を奪われた。打球の飛距離、スイングスピードの速さはもちろん、一球、一球に目的を持って、打ち返していたことに当時は衝撃を受けた。

「例えば、最初は右方向の打撃から入って、最後はフルスイングと段階を踏んでいました。自分が入団したばかりの頃は、来た球を強く振るだけ。ボール球も狙いを持って打っていました。練習から、苦しい打撃すればするほど、試合では楽にというか、対応できるということを学びましたね」

 ウエートトレーニングも精力的に行っていたが、人とは違うものを必ず持ち込んでいた。それは“バット”だ。

「ウエート場には必ずバットがありました。ウエートしたら、すぐにスイング。スイングして、ウエート……。トレーニングした箇所がきちんと打撃に繋がるようにと意識されていました。それからは自分もやっていましたし、勇人さんは今でもやっているんじゃないでしょうか。“お前はこのスイングするためにつけた筋肉なんだ!”と教え込む、みたいな感じです。僕はそう捉えて、練習していました」

 辻さんは4年目の2016年にプロ初安打を放ち、5年目ではプロ初先発も経験。6年目は1軍8試合だったが広島とのCS最終S第1戦では代打で右前打をマーク。この年限りで球団から戦力外通告を受け、ユニホームを脱ぐことになった。引退の報告をした時のことを思い出すと、今まで愛情を注いでもらった感謝の思いがこみ上げ、言葉に詰まる。

「引退した今でも、僕のことを気にかけてくれます。自主トレなどで教えてもらったことで、僕も1軍でヒットを打つことができたと思います。高橋由伸さんや勇人さんのおかげで自分は6年間、ジャイアンツでできました。巨人に指名してもらえ、出会えたことに感謝です。2000安打、おめでとうございますとお伝えしたいです」

 辻さんは今、子供たちに野球の楽しさを伝えるジャイアンツアカデミーの講師として小学生を対象に指導している。ここから、未来のプロ野球選手が羽ばたいていくかもしれない。坂本ら偉大な先輩から学び、教わった巨人の系譜をしっかりと後世に伝えていくことが、これからの使命となっていく。

(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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