「レイズはベイスターズより細かい野球」 筒香嘉智が語る渡米1年目のリアル

メジャー選手は練習の虫、キャンプ中は「5時過ぎにはみんな球団施設に来ている」

 また、日本では「メジャーは練習時間が少ない」というイメージが強いが、それもまた「勝手なイメージですよね」と話す。

「シーズン中はみんな、球場に入る前に1人で準備をしてきたり、球場に早く入って準備をしています。スプリングトレーニングの時なんて、大体5時過ぎにはみんな球団施設に来て、6時には動き始めています。全体練習の時間が短いから、そこだけクローズアップされて『メジャーは練習をしない』『練習が終わるのが早い』って思われてますけど、トータルで動いている時間は日本と変わらないですよ」

 シーズンを戦う中で感じたのは、メジャー選手の切り替えの早さだ。試合に負けても、エラーをしても、ノーヒットに終わっても、家路に就く頃にはみんな、次の試合に向けて思考が切り替わっている。「ビックリするくらい早いですね。日本とちょっと違うのは、育った環境もあるとは思うんですけど……」と、筒香は自分なりの考察を続けた。

「僕が思ったのは、メジャーの選手は1つのプレー、1つの練習に本気で取り組んでいるから、早く切り替えられるんじゃないかと。もうこれ以上はできないっていうくらい全力でやるから、失敗しても仕方がない。やれることはやってダメだったら、また次、頑張ろうって切り替えられるんだと思うんですよね。そこには甘えは一切ないから、他の感情は沸かないんだと思います」

 選手が全力で野球に打ち込める環境もまた、整っていた。今季のレイズは、地元・米国に加え、ドミニカ共和国、ベネズエラ、キューバ、コロンビア、韓国、日本から選手が集まる多国籍軍だった。レイズの一員となるまでのバックボーンが違う選手が、それぞれの個性を生かしながらチームとして絆を強くした背景には、今季の最優秀監督賞を受賞したケビン・キャッシュ監督の存在がある。

「野球をやっていて、本当に楽しかったですね。表現は難しいんですけど『外国の人ってこんなにいい人が多いんだ』って思いました。どちらかというか、自分のことに気を配ってるイメージがあったんですけど、人に気を遣える人が多いし、チームの勝利のために全力を出せる。ちょっと輪を乱す空気を出しているなっていう人が、お世辞抜きで選手、スタッフ、チーム関係者、誰一人いませんでした。

 もちろん、チームが勝っていたから雰囲気が良かったのもありますけど、キャッシュ監督はすごく雰囲気を作るのがうまいと思いましたね。言うことは言うし、締めるところはパッと締める。空気感を察知する能力にすごく優れているんです。選手もみんな大人で、言葉が通じない中でも、すごく楽に野球だけに集中できる環境がありました」

 現役時代はキャッチャーとして6球団を渡り歩いたキャッシュ監督は、主に控えではあったがピッチャーからの信頼は厚かった。選手が持つ才能を最大限に引き出すために今、何が必要なのか。その判断能力に長けた人物なのだろう。

 筒香は期待された成績を残すことはできなかったが、来季以降に繋がる手応えを感じるシーズンを送ることができた。新型コロナウイルスの影響で超イレギュラー開催となったシーズンを終え、「来シーズンに向けてのオフが楽しみ」と言える今があるのは、キャッシュ監督をはじめチーム関係者、チームメート、サポートしてくれるスタッフ、そして家族のおかげでもある。「いろんな方に感謝しないといけないですね」。自然と素直な気持ちが言葉となって現れる。

ワールドシリーズで感じたファンの声援が持つ力「体の中から感じるものが違いました」

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