現役No.1ユーティリティは? “稀代の万能型”森野氏が「杉谷ではない」と語る理由

現役時代に“ユーティリティ”として存在感を見せた元中日・森野将彦氏【写真:荒川祐史】
現役時代に“ユーティリティ”として存在感を見せた元中日・森野将彦氏【写真:荒川祐史】

森野氏が注目する現役選手は西武・外崎「辻監督は困らないだろうね」

 もちろん、ただ守備位置につけば成立するほど甘くはない。「最低限は守れるなと思ってもらえないと使ってもらえない」と森野氏も痛感してきた。三塁のレギュラー時代、左を見れば遊撃に井端弘和、二塁に荒木雅博がいた。「当然、自分は見劣りするけど、練習でミスしないということが大事。ミスをすると首脳陣は使えないなって思うからね」。まずは信頼感を得ることが先決だったといい「いかに上手く見せるか。安心して見てもらえるかというのは意識していたかな」と振り返る。

 現役選手の中にも、ユーティリティと呼ばれる存在はいる。森野氏が最も“万能型”だと思う選手は誰か――。

「うーん、杉谷(拳士)は違うかな(笑)。やっぱりレギュラーとして出続けるってことが真のユーティリティだからね」

西武・外崎修汰【写真:荒川祐史】
西武・外崎修汰【写真:荒川祐史】

 日本ハムの元気印の代わりに名前をあげたのは、西武の外崎修汰内野手。今季は二塁で110試合出場した一方、外野も18試合。過去には三塁、遊撃での出場経験もある。「もし主力の誰かが離脱しても、控え選手じゃなくて主力で穴埋めできる。辻監督は困らないだろうね」と強みを語る。

 ユーティリティの重要性を認識する上で、森野氏はひとつの言葉を思い出す。「落合さんはよく『想定外は作るな』と言っていた。その想定外を防ぐ役割を、俺が果たすことが多かったのかなと」。複数ポジションが守れるだけでなく、戦力の底上げを図る存在であってこそ――。

「俺はエリートじゃないし、泥まみれになって誰よりも叩き上げでやってきたからね。その結果が、いろんなポジションを守ったということだと思う」

 自らの手で居場所をつかみ取ったからこそ、開けたプロ人生。単なる“便利屋”や“器用貧乏”にとどまらない気概が導いた21年間の現役生活だった。

○「使いこなされる力。名将たちが頼りにした、“使い勝手”の真髄とは。」

 10月30日に講談社から出版された森野将彦氏初の著書。星野仙一氏、落合博満氏ら6代の監督を通じてレギュラーであり続けた“使い勝手の良さ”とは――。21年間のプロ人生で培った哲学には、ビジネスにおいても役立つ言葉が散りばめられている。

(小西亮 / Ryo Konishi)

RECOMMEND