「査定は一緒でいい」 敗戦処理から最優秀中継ぎに成長した中日右腕の“傷の結晶”

今季のベストボールは? 川上憲伸氏がズバリと指摘「それです! 凄い!」

 セ・リーグの主なリリーフでトップの与四球率1.25という数字がそれを証明している。そんな祖父江に今年のベストボールを聞いた。すると、「あれちゃう? 大山(悠輔)のインサイドの真っ直ぐ」と川上氏がつぶやいた。「それです! 凄い!」と祖父江が目を丸くした。

 10月13日。ナゴヤドームの中日・阪神19回戦。8回表、4-2、中日2点リード、2死一、三塁。一発で逆転。打席に大山。カウント1-2。祖父江はボールをこねた。

「普通は外のスライダーです。しかも、その頃の大山は絶好調で第1打席もホームラン。実は試合前のミーティングで『インコース危険』という指示も出ていたんです。でも、あるなと思いました」

 木下拓の指はインコースのストレートを要求した。

「来た! と思いました。もう腹を括って投げるだけ。思いきり行きました」

 渾身のストレートはミットに吸い込まれ、バットは空を切り、右腕は拳を突き上げた。イメージとサインが見事に一致した瞬間だった。一方、リリーフ一筋7年で変えていないものもある。登板前のルーティーンだ。

「1年目からブルペンでは10球から15球で肩を作っています。球種は8割がスライダー。これで1回作って、登板直前に4、5球。僕の生命線はスライダーなので、ほとんどがスライダーの準備です」

 今年はそこにシュートが加わった。

「去年までも投げていましたが、どうもしっくり来ませんでした。でも、コロナ期間中のブルペンで阿波野(秀幸)さんから『曲げようとしなくていい』というアドバイスをもらって、その感覚で投げたら、掴めました」

 変えたもの、変えないもの、加えたものが見事に融合し、祖父江はセットアッパーのポジションを確立した。

「入団以来、僕はいつも登録抹消が隣合わせでした」

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