「感覚だけで投げたらできた」 天性の元西武サイド右腕、人生変えた“魔球”シンカー

2軍監督、1軍ヘッド…現役引退後は様々な役職に

「意外にイケる」と感じたシンカーを武器に、潮崎氏は急成長を遂げた。その夏の徳島県大会では、背番号こそ「5」のままだったが、事実上のエースとして投げ続け、決勝まで進出。名門・松下電器に入社後に磨きをかけ、ドラフト1位での西武入団へつながっていった。

 潮崎氏が現役を引退したのは、36歳の2004年だった。年齢を重ねるうちに腕の振りが鈍り、球速ダウンとともに、シンカーもキレを失っていった。8月の終わり、フロント幹部から「選手としては来季契約しない。しばらく身の振り方を考えて、答えがほしい」と通告されると、その場で「もう(現役は)いいです」と即答してしまった。「いやいや、家族とも相談して、よく考えろ」と促されたほどだった。

「30歳くらいからイメージ通りの球が投げられなくなって、いつ辞めてもいい感覚でした。もともと野球エリートとしてやってきたわけではないし、まっとうした、という気持ちでした」と淡々と受け止めた。そして、「シンカーを覚えて、人生がガラッと変わりました。人生を変えてくれた宝物です」と改めて“魔球”に感謝する。「もっとも、野球は好きやから、プロになれなかったとしたら、いまだに草野球をやっているでしょうね」とトレードマークの人懐っこい笑顔を浮かべた。

 現役引退後は、球団編成部調査担当、2軍投手コーチ、1軍投手コーチ、球団編成部プロスカウト、2軍監督、1軍ヘッド兼投手コーチを歴任し、19年から現職。ユニホームとネクタイ姿を交互に繰り返している形で、入団から西武ひと筋31年に及ぶ。

 現在52歳。過去には、1軍監督候補としてスポーツ紙の1面を飾ったこともあった。「僕は大所帯をまとめて『付いて来い!』と言うタイプではない。監督には向いていません」と笑い、現職について「チームを構築する中心的な部署で、非常にやりがいがある。こういう部分が足りないから、こういう選手を発掘しようと考えることは、現役時代とは違うおもしろさがあります」とうなずく。劇的な野球人生、今後も何が待っているかはわからない。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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