23歳で他界した親友へ…中日・京田陽太が綴った手紙 新たなグラブと交わした約束

中井さんの母に送った1枚の写真 来季使用のグラブに「諒」の刺繍

諒へ
一年間グラブ使わせてくれてありがとう。
本当にたくさん助けてもらったわ。
いつも一緒にショート守ってたけど、諒ちゃんと守ってたか?
エラー13個したから多分ずっと笑ってたやろ?
来年もまた家に行くからいい報告出来るように頑張るわ!
また一緒にショート守ろうな。
京田陽太

 メッセージ帳を受け取った中井さんの両親が、穏やかな表情で祭壇に語りかける。「よかったなぁ、諒」。たとえわずかな時間でも、思い出を共有できたことがうれしかった。頻繁に連絡をくれる息子のような存在は「これからも、諒と一緒に戦います」と言ってくれる。遺族としては感謝の思いともに、少し複雑な感情もよぎる。

「京田君にそこまで背負わせていいのか。私たちとしては、諒のグラブで戦ってくれただけで十分なんです」

 かけがえのない息子を失い、8か月が過ぎた。いくら時間がたっても、悲しみは消えてくれない。だが、気づいたこともある。中井さんの母・啓子さんは言う。「沢山の人の諒に対する気持ちの強さが、私の何ともいえない淋しさをぼかしてくれています」。誰かの背中を押していることも知った。「亡くなってからでも、人の役に立っていたのかなと思うと、我が子ながら天晴れです」。誇らしさを噛みしめ、懸命に現実を受け入れている。

 年の瀬。啓子さんのスマホに、1枚の写真が届いた。写っていたのは、新品のグラブ。手のひらが当たる部分に「諒」の刺繍が施されていた。

「僕の方が、力をもらっているんです」。京田には遺志を背負っている実感はない。亡き友と戦うことは、もうプロ人生の一部になった。今はただ、2人をつないでくれた遊撃というポジションを突き詰めたい。

 1年後、また会いに来る約束を交わした。胸を張ってシーズンの報告ができなければ、先輩としては格好がつかない。新たなグラブとともに迎える2021年。京田は微笑んで言った。

「諒に笑われないようにしないといけませんね」

【画像】中日・京田が亡き親友に綴った直筆のメッセージと来季使用するグラブの写真

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