「勝つことと育てることは正反対」ロッテ井口監督の“育成方針”と成長認める若手は?

「経験値が上がれば、メジャーに行った秋山翔吾選手以上になる」

 コロナに揺れたピンチを救ったのは、2018年ドラフト1位の藤原恭大だ。井口監督が黄金の右手で交渉権を引き当てた、走攻守3拍子揃った外野手は、10月7日のオリックス戦から1軍でスタメン出場。勝負強い打撃でヒットを重ねると、プロ第1号と第2号を先頭打者ホームランで飾る離れ業も演じながら、26試合で打率.260、3本塁打、10打点と奮闘し、首脳陣の信頼を勝ち取った。CS第2戦では史上最年少となる20歳6か月で猛打賞を記録している。

「恭大は、いろいろな意味で思いきりのいいスイングをする。後半26試合に出る中で、ほぼ全員が初対戦のピッチャーで、何が何だか分からずに打ちにいきながら結果を残してくれました。あとは経験値と1年間戦う体力をどれだけつけるか。まず、1軍に来て、2軍以上の成績が出せる選手はなかなかいない。それは彼が持っている力だと思います。チームは当時、沈んだ雰囲気でしたけど、恭大が1軍に来て『野球が楽しい』って言いながら、新鮮な想いでやってくれた。そういう選手がいたので頑張りが利いたんだと思います。経験値が上がれば、メジャーに行った秋山翔吾選手以上になるんじゃないかな」

 かつて、期待の高卒ルーキーは、1年目からどんどん1軍で起用された。だが、井口監督は期待する若手だからこそ、あえて2軍で育成。今岡真訪2軍監督と密にコミュニケーションを取りながら、チームとしての育成方針を一貫させている。

「勝つことと育てることは正反対。優勝争いをしながら若い選手を育てるのは、まず無理です。どうやってバランスを取るかが大事。そこは球団と我々とでビジョンを共有して取り組むことができている。今年勝つだけじゃなくて、3年後、5年後、10年後、常に優勝争いをするチームを作るのが球団としてのビジョンです。そこに向けてどうやって戦力を整えていくか、経験させるか。勝ちたいと思うなら経験値が高い選手を出せばいいけど、若手に経験させることも大事なんですよね」

 ソフトバンクとのCS第2戦、2点を追う9回2死満塁の場面で、指揮官は代打としてルーキーの佐藤都志也を送った。起用の理由を「今後の経験として、1回でもいいから打席に立たせてあげたいという想いはありました」と明かす。結果はセンターフライで試合終了を迎えた。

「ベンチに帰ってきた時、本当に悔しそうで泣きそうな顔をしていましたよ。でも、そういう想いを持って、打席に立ってほしかったんですよね」

 少し先の未来を見ながら、どうやって育てるか。就任4年目の今年、井口監督が着手した「育てる」成果がそろそろ現れてくるはずだ。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

RECOMMEND