「サボっている人には訪れない」 元西武右腕が語る、イップスを克服した瞬間

「何かのきっかけで突然良くなることがある」

 その1球以来、マウンドで不安に襲われることは一切なくなった。

 それまでの4年間が別人であったかのように秋の日本選手権では自責点0で3勝を挙げて優勝に貢献、MVPに輝いた。日本代表メンバーにも選ばれ、翌91年のドラフト会議で西武から2位指名を受けた。

 たった1球で陥り、たった1球で克服したイップス。新谷氏は自身の経験を踏まえて「基本的には治らないと思っています」と言うが、それは特効薬がないという意味だ。「でも、僕みたいな人もいっぱいいると思うんです。何かのきっかけで突然良くなるということがある。そのタイミングは自分では選べなくてサボっている人には訪れない。いつか治ることを信じて諦めず人一倍練習しておけば、きっとそのタイミングが訪れると思います」と語る。

 いつ治るのか分からないという状況が続くと、心が折れてもおかしくない。「メンタルがやられちゃうんですよね。僕も社会人3年目が終わった時に野球をやめようと思いました。でも、会社から『辞めろ』とは言われない。諦めないで練習しましたよ。自分の実力を自分なりには評価していましたから。イップスだけが自分を表現できない要因だったので『それさえ治れば大丈夫』とずっと自分を信じていました」。

 ドラ1候補と呼ばれてから4年間イップスに苦しみ、27歳でプロ入りした新谷氏の言葉。今悩んでいる選手に届いてほしい。

(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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