「長年、原監督の下でやっている」 巨人亀井、劇弾を生んだベテランの経験値

亀井はプロ17年目で通算99本塁打、あと1本で大台到達も…

 この日、サヨナラ打を放った亀井は言った。「長年、原監督の下でやっていますから。監督の考えを理解しながら、どのようにして動くのか、準備しています」。9年前の日本一メンバーの一人でもある。チームとしての強さを知っている。

 今のチームにも力のある若手選手は多くいる。だが、細かなところでミスが出た。今季は規定により、延長戦はない。9回で決着をつけなくてはならないが、原監督はその前で試合を決めたかった。

 指揮官は最後のイニングで亀井というカードを切り、勝利を掴みにいった。

 打席に入る前、17年目のベテランは冷静な目で、三嶋の投球練習を見ていた。「ストライクが入っていなかったので、ワンストライクまでは見ようかな、と」。初球の151キロの直球はボールになった。2球目はスライダーを見送り、ストライク。そして3球目に甘く浮いたスライダーを一振り。打った瞬間にスタンドインを確信する一発となった。

 ベンチでは試合の戦況を見ながら「準備だけはとりあえずしておかないといけないな、というのはあった」と、早い段階で一度体を作っていた。いつ、監督に名前を呼ばれてもいいように、気持ちを高めていた。

「こういう緊張感や苦しいことも経験もしてきましたから。力を出せたということは、今までの経験が力になっているのかなと思います」

 カードを切る順番を考え、試合を運んだ原監督、そしてその期待に答応えた。プロ通算99本目の本塁打は、開幕戦を飾る価値のある一本になった。ベテランが示したこの劇的弾には、個々が勝つために何をしなくてはならないのか、強い巨人であるための意思が詰まっていたように見えた。

(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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