230奪三振ペースの要因は“時代に逆行” 中日・柳裕也に起きた投球の変化とは?

ストレートの平均球速は変わらないが…割合は昨季比で1割も減少

 直球の平均球速は、今季のプロ野球平均144.8キロを下回る142.0キロで昨季とほぼ変わらない。ただ、全投球に占める割合は昨季の44.0%から10ポイント近く下がった34.3%に。11勝を挙げた2019年の47.6%からは13ポイント以上も下がっている。一方で、カットボールは昨季比で約8ポイント増の29.8%まで上昇。チェンジアップも4ポイント増の11.7%となり、“変化球多投”の傾向が出ている。

 割合の変化は、結果にも反映されている。どれだけ失点を増減させたかを球種ごとに示す指標で、ストレート(wFA)は「-0.4」なのに対し、カットボール(wCT)は「6.0」、チェンジアップは「5.2」と貢献している。カーブとスライダーもプラス数値で、やはり変化球が快投を支えている。メジャーリーグに追随するように、スピードボール全盛になった現在のプロ野球で、時代に逆行するかのような姿で、打者を手玉にとっている。

 その中で、大きな改善を見せているのがチェンジアップ。昨季は柳自身が「シンカー」と呼んでいた球種で、過去4年間は常にマイナス数値だった。ただ、チェンジアップ一辺倒ではないのも事実。キャリアハイの成績を残した2019年は、「wCT:16.5」と“困ったらカットボール”だったが、今季は各球種が底上げされている。

 もちろん制球も抜群。ストライクゾーンとボールゾーンを合わせて25分割にしたヒートマップで見ても、昨季以上にアウトローに徹底して投げ込めている。その器用さと完成度の高さは、奪三振とは無関係ではないはず。シーズン230個ペースで“独走”する柳の奪三振ショーが、チーム躍進の旗印になりそうだ。

【画像】柳の“アウトロー徹底”を裏付ける投球分布図の比較(株式会社DELTAのデータ参照)

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