燕時代の同僚が語る楽天石井采配の神髄 「年に1回あるかどうかのプレーを準備」

「走れる打者に当たりが出れば、もっと機動力を使える」

 8回にも先頭の茂木が一塁内野安打。鈴木大がバントで送り、1打勝ち越しの好機を作ったが、頼みの3番・浅村、4番・島内が倒れ実らなかった。「送りバントは3本ともうなずけます。理にかなった作戦だったと思います」と野口氏は評した。

 とはいえ、開幕からまだ2か月。石井監督が手堅いだけで終わるはずはないと見ている。「楽天打線の現状は、小深田、辰己といった走れる選手がそろって打撃不振。なかなか出塁できず、1番打者が固まっていない。幸い茂木、岡島、田中和ら1番経験者は数多い。ここが固まり出塁できるようになれば、もっと機動力を使えるようになる。何でもできる2番・鈴木大との間でエンドラン、盗塁など多彩な攻めを繰り出すと思う」と予測する。

 石井監督と野口氏はヤクルト時代、当時監督の故・野村克也氏にID野球を仕込まれた。野口氏によると、その真髄は「年に1回あるかどうかのプレーを、キャンプから時間をかけて練習しておくこと」にある。野村氏が考案し、1993年の日本シリーズで当時常勝の西武を破る決め手となったギャンブルスタート(バットにボールが当たる瞬間、走者がライナーでの併殺を恐れずスタートを切ること)もその1つだが、四半世紀以上の時を経て、いまやギャンブルスタートはどのチームも繰り出す“普通の作戦”だ。

「シーズン終盤の勝負所や短期決戦のために取っておく作戦です。石井監督がどんなプレーを練習させ、隠し持っているのか。それを見られることを楽しみにしています」と野口氏は語る。今後優勝争いが激しくなればなるほど、石井監督の采配が楽しみになる。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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