「身長を理由に落としたらかわいそう」 163センチ、元西武“小兵野手”の指導哲学

「勝ち負けにこだわらず、選手の色々な面を見たい」

 コーチ就任後、アカデミーの中で唯一入会前にテストを行うアドバンスクラス(小学5、6年生)の選考を手伝った。テストに合格して入会を決めた子どもたちは身長が高い子が多かった。しかし、身長が低くてもセンスのある子どもはいるという。

「本格的なトレーニングもしていないから背が高い子に勝てる訳がないし、身長が低いと打球が飛ばないと思われてしまう。でも、僕からしたら、それで落とすことはしたくないです。中には『身長を理由に落としたらかわいそうだな』と思う子もいました。これからも、アカデミーのレッスンやNPB12球団ジュニアトーナメントのセレクションなどは勝ち負けにこだわらず、選手の色々な面を見たいと思っています」

 2020年シーズン終了後に戦力外通告を受けた後はトライアウトを受けるつもりだった。しかし「こんなに小さい僕をとってくれた球団への恩返しがしたい」とアカデミーコーチ就任要請を受けた。子どもたちにも「周りの人への感謝の気持ちを持ってほしい」と話す。

「できて当たり前のことは、ちゃんとできるように。あと大切なのは、感謝の気持ちを忘れないことだと思います。何年後かにアカデミーの子どもたちがプロ野球選手になる日がすごく楽しみですね。その時が待ち遠しいです」

 小さな身体で厳しい世界を生き抜いてきた水口さん。その姿は、子どもたちにも心強い存在となるはずだ。

(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)

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