広島守護神がセ界初失点 DeNA9回7得点猛追を牽引した大和の驚異的な勝負強さ

DeNA・大和【写真:荒川祐史】
DeNA・大和【写真:荒川祐史】

今季は打率.253、得点圏では打率.486に跳ね上がる

■広島 12ー11 DeNA(19日・東京ドーム)

 DeNAのチーム最年長33歳の大和内野手が、広島のドラフト1位ルーキー・栗林良吏投手からセ・リーグで初めて得点を奪う一打を放った。プロ16年目のベテランは19日現在、今季トータルの打率は.253も、走者を得点圏に置くと.486(37打数18安打)と圧倒的な勝負強さを発揮している。

 めったに見られない猛追劇だった。同日に東京ドームで行われた広島戦。DeNAは4-12と8点ビハインドで迎えた9回、宮崎の満塁弾などで追い上げた。

 3点差に迫り、なおも2死一塁として、ついに相手の守護神・栗林をマウンドに引きずり出すことに成功。しかも楠本が左翼フェンス直撃の適時二塁打を浴びせて2点差。ここで大和がこの回2度目の打席に入った。

 栗林は初球にカーブで見逃しストライクを取った後、6球連続で得意のフォークを投じてきた。大和はファウルで粘りながら、最後はカウント3-2から高めに浮いたところを捉え、しぶとくゴロで三遊間を抜いて二塁走者・楠本を迎え入れた。とうとう1点差である。

 栗林は「デビューから22試合連続無失点」で日本記録を更新。23試合目の13日・オリックス戦で初失点を喫したが、その後は15日・西武戦、前日18日・DeNA戦と無失点。つまり、大和のタイムリーによって、DeNAはセ球団で初めて栗林に失点を付けたのである。結局試合にはあと1点届かず惜敗したが、相手の脳裏にDeNA打線の脅威を刻み込んだことには意義がある。

 大和は「8番・遊撃」でスタメン出場。1点ビハインドの2回には、1死二塁で相手先発・森下のカットボールを左前へ弾き返す同点適時打を放っていた。「追い込まれていた(カウント0-2)ので、最低でも前に打球を飛ばすことを意識していました」といぶし銀の働きに事もなげ。4回1死一、三塁では空振り三振に倒れたものの、この日も3度の得点圏で2度結果を出した。

 いまや“得点圏の神”とも呼ばれる大和だが、今季開幕スタメンにはその名前がなかった。柴田竜拓内野手、倉本寿彦内野手、田中俊太内野手らと二遊間のポジションを争う中で、苦戦を強いられていた。

 しかし、柴田、倉本が負傷で戦列を離れた。さらに交流戦が始まった5月25日以降、それまで2番を打つことが多かった大和が8番(DH制のパ・リーグ本拠地では9番)に定着し、走者を返す役割に徹すると、最下位を“独走”していたチームが急上昇。劣勢でも諦めずに奮闘したベテランは、“逆転”の糸口をつかみ、今やチームに不可欠の存在となった。

 もっとも、プロの世界の一寸先は闇。この日から、負傷の癒えた柴田が約2か月ぶりに1軍合流。大和は再び気の抜けないポジション争いにも立ち向かうことになる。その生き様から目が離せない。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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