菊池雄星が口にした「野球は30歳を超えてから」 真意に近接する4つ目の白星
8度のクオリティスタートも「今はもっと高く、7回2失点を目標にして」
培った「有形」の技も駆使した。リーグ2位の47盗塁を誇る相手に企てすらさせなかったクイックモーションに、菊池は自信をのぞかせる。
「普通に1.2~1.3(秒)くらいのクイックで投げていれば大丈夫。アメリカの野球はそんなにリードは大きくないですから。走者をあまり意識しないようにして、バッターに集中してます」
盗塁阻止には、モーションを起こしてからボールが捕手のミットに収まるまでの限界時間がある。菊池はそれを体に染み込ませている。さらに、完全習得したチェンジアップの握りを分かりづらくするために、グラブの位置をベルトの前に据えたことで、“目力”が使えるようになった。図らずも、顎から下げたグラブの位置が、相乗効果を生み出した。コロナ禍で60試合制となった昨季、菊池は9試合に登板し、許した盗塁は5個。今季はここまでの13試合で僅か1個に留めている。
一塁走者と対峙するセットポジションは「有形・無形の技」を繰り出す“静”の姿でもある。
立ち上がりに力みからバランスを崩し先制点を許したが、2回からは「テイクバックまでリラックスして投げる」意識で修正した。過去9試合で8試合にクオリティスタート(QS=6回以上、自責3以下)を記録した菊池は、言い切った。
「簡単なことじゃないですけど、今はもっと高く、7回2失点を目標にしてマウンドに立っています」
試合後、サービス監督は来月に開催される球宴への推薦出場について「考えるべきだろう」のコメントを残したが、その感想を求められた菊池の反応はクールだった。
「オールスターのことを考えずに次の試合にまた集中してやるだけです」
周囲の思いを一つにするまで、まだ時間はある。隙のない投球術を磨き続ける菊池雄星の姿勢が、ぶれることはない。
(木崎英夫 / Hideo Kizaki)