盤石の右腕と覚醒した右の大砲が好成績 セイバー指標で選ぶパ月間MVPは?

オリックス・山本由伸【写真:荒川祐史】
オリックス・山本由伸【写真:荒川祐史】

6月の山本由伸はQS率100%、防御率や奪三振率などでリーグ1位

【投手部門】

 投手評価には、平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示す「RSAA」を用いる。ここでのRSAAは「tRA」ベースで算出。tRAとは、被本塁打、与四死球、奪三振に加え、投手が打たれたゴロ、ライナー、内野フライ、外野フライの本数も集計しており、チームの守備能力と切り離した投手個人の失点率を推定する指標となっている。

 各球団のRSAA上位3人は以下の通り。

〇オリックス:山本由伸8.70、宮城大弥5.04、田嶋大樹3.65
〇ソフトバンク:津森宥紀3.24、武田翔太3.23、東浜巨2.51
〇ロッテ:益田直也2.02、東妻勇輔1.80、佐々木千隼1.38
〇楽天:松井裕樹3.31、則本昴大2.60、宋家豪1.71
〇西武:平良海馬2.77、松本航1.41、十亀剣1.31
〇日本ハム上沢直之5.18、伊藤大海2.53、河野竜生2.25

 6月を席巻したのは、やはり好調オリックス投手陣と言えよう。山本、宮城、田嶋の3投手がリーグの中でもRSAA1、2、4位だった。他にも平野佳寿3.53、山岡泰輔2.74、ヒギンス2.54と、RSAA上位の投手が目白押し。特に平野佳の復調は救援陣の安定に大きく貢献している。

 先発投手で特筆すべきはハイクオリティスタート(HQS)率の高さである。34.8%のHQS率はリーグ1位。中でも山本のHQS率は6月だけで75%、今季通算で73.3%(7月2日時点)である。6月のセイバーメトリクスの指標による月間MVPには、公式の月間MVPも受賞した山本が推挙すべき選手となる。

 山本由伸:RSAA8.70、防御率0.64、WHIP0.68、QS率100%、HQS率75%、奪三振率12.54、被打率.137、被OPS.399(すべてリーグ1位)

鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。

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