「継承」と「革新」はセット 球団職員20人超のリアルで紡いだDeNA10年の歩み

スタンドからペンライトが投げ込まれた2013年「YOKOHAMA STAR☆NIGHT」の様子【写真提供:横浜DeNAベイスターズ】
スタンドからペンライトが投げ込まれた2013年「YOKOHAMA STAR☆NIGHT」の様子【写真提供:横浜DeNAベイスターズ】

新しいことをしながら繋がりを大切に「『継承』と『革新』はセット」

 取材を進めながらも気に掛かっていたのが、「球団職員の物語で果たして引きがあるのか」ということだった。コンセプトは面白いが、斬新さに不安を覚えることもあったという。そんな中、やはり外せないだろうと追加されたのが、DeNA初代監督の中畑氏インタビューだった。対面で行われた取材は「あの口調であの熱さなので、僕がやられてしまいました」と笑いながら振り返る。

「『俺は営業本部長』とおっしゃっている中畑さんのお話を伺っていると、あの熱、あの『熱いぜ!』という感覚が職員のマインドを変えていったんだと思いました。その時『中畑さんの話から書き始めれば、読者も素直に物語に入れるんじゃないか』と最初のパズルが決まった。中畑さんと出会えたことが、僕の中では本を書けたターニングポイントだったと思います」

 初代監督から始めるのであれば、結びは今季から指揮を執る三浦監督しかいない。三浦監督にもインタビューをしたのは2021年を迎えてから。球団職員の取材がスタートした昨年8月時点では就任すら決まっていなかったのだから、偶然なのか必然なのか、世の流れは面白い。

 タイトルにもなっている「継承と革新」という言葉は、著書の中でもたびたび登場する。球団を引き継いで以来、DeNAが掲げるコンセプトでもあるが、取材を進める中で二宮氏は「『継承』と『革新』はセットなんだ」という思いを強くしたという。

「『革新』の方が強いイメージでいましたが『継承』と『革新』はセット。大洋は(現社名の)マルハニチロになってもスポンサーとして関わっているし、TBSも試合中継で関係は続いている。球団職員の中には大洋時代からの方もいる。新しいことばかりをしているのではなく、繋がりを大切にしているからこそ、周囲の理解を深められたように思います。さらに、球団の中にあった危機感に似た思いを、実はファンの皆さんも持っていた。このままで大丈夫なのか。愛したい球団なのにどうやって愛せばいいんだろう。そんな思いと、上手くはまった気がします」

大きなトピックとなった「STAR☆NIGHT」 2013年はペンライトを投げ込まれるも…

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