不整脈入院が招いた負の連鎖 元開幕投手が素直に認める欠点「メンタルよえーな」
募る焦り「元気な姿を見せたら、計画を早めてくれるかな」
「復帰してからちょっとずつ投げていこうとは思ったんですが、肩肘が元気だった分、ガンガン投げていたら肘の感覚がおかしくなっちゃって。元気な姿を見せたら、トレーナーも計画を早めてくれるかなと思っていました」
状態が万全でない中、1軍に再昇格したのが7月。開幕戦と同じ横浜スタジアムでのDeNA戦に先発したが、4回8安打5失点で黒星を喫した。その年は8試合登板にとどまり、3勝2敗で防御率5.71。「どんどん自信がなくなっちゃって。いい時との差がすごい」。突入した負のスパイラルから、抜け出せない。コロナ禍の2020年は夏場に右脇腹を故障したのもあり、1軍登板なしに終わった。
気がつけば、2019年8月から2年近く1軍から遠ざかっている。大卒のプロ5年目。誰かに言われなくても、今季終了後に待っていそうな現実は想像できる。だからこそ、とことん“弱い自分”と付き合い、克服のきっかけを模索する。グラウンドにいない時は、メンタルトレーニングの本を熟読。周囲からの助言も聞き入れる。
「ダメな時は、悪い流れに吸い込まれていってるよ。リセットする時間を作ってみてもいいんじゃないか?」
そう諭してくれたのは、浅尾拓也2軍投手コーチ。極限のマウンドを重ね、中日の黄金期を支えた絶対的セットアッパーの言葉は、説得力を持って響いてくる。ほんの些細なことでも、視点は変わる。ピンチを迎えた時、一度マウンドから降りて深呼吸をしてみるのもいい。基本中の基本だとしても、できることからひとつずつ積み重ねていく。
1軍先発陣の状況を気にするよりも、まずは2軍で自信を取り戻す。「もう、ポジティブに考えていくしかないですよね」。反攻のシーズンは、まだ半分残っている。
(小西亮 / Ryo Konishi)