東京五輪での舞台裏の駆け引き メキシコ右腕が侍ジャパン村上を仕留めた“前の一球”

村上から三振を奪うも「その時点でスライダ―が決まるとわかっていた」

 そこで投じたのが、通称「縦スライダー」と呼ばれる落差の大きな変化球。村上は空振り三振に倒れたが、右腕は「その時点で僕のスライダーが決まることはわかっていた」と不敵な笑みを浮かべる。勝負の肝はバットが空を切った前の1球にあったというのだ。

「カットボールの後のスライダーだ。その前にちょっとカットボールっぽい真っすぐを同じところに投げている。だからそこにすぐにもっと大きいスライダーを投げた。そして三振を取れた」

 その後も、絶対的な信頼を置くスライダーを軸に、甲斐を三ゴロ、山田も遊ゴロと侍ジャパン打線をわずか12球で完全に封じた。メキシコは続くノックアウトステージで惜しくも敗れて敗退となったが、「1イニングだけでしたけど、自分の投球を証明できた」と日本のトップ選手にも通用すると自信を深めた。

 一足早く“夢の舞台”から去ることになってしまったバルガスだが、7日の決勝を「いい試合になると思う。(どちらが勝つかは)とても難しいです」と楽しみにしているという。

「米国と日本の野球はまったく別のタイプ。米国はやはりパワーを使ってくる。日本はホームランを狙うというよりはコンタクト、正確に当ててくる、つないでくる野球」とキーポイントを挙げ、3-2、2-1、1-0とロースコアの展開を予想した。

 残すところ3位決定戦と決勝の2試合となった東京五輪の野球競技。国のプライドを背負った白熱の展開の裏で行われている、一球一球の高度な駆け引きにも注目したい。

(工藤慶大 / Keita Kudo)

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