「脱力」でキレを増しリリーフで安定感抜群 ロッテ佐々木千隼が覚醒した理由
初めて中継ぎとしてシーズンを過ごし、感じた「難しさ」
昨年10月6日にチーム内で新型コロナウイルス感染者が判明し、選手の大幅入れ替えに伴って1軍昇格した。中継ぎで5試合に登板し、4回1/3を投げ4失点。3週間で登録を抹消された。チャンスを掴み取れなかった悔しさもあったが、新たな思いも芽生えていた。
「中継ぎの大変さだったり、経験できたのはよかったかなと思いますし、先発だけじゃなくて、なんでもできる役割になりたいなって思うような経験でした」
先発でも中継ぎでも、投げられるところで精一杯やりたい――。そんな思いを胸に、今年の1軍キャンプを過ごした。今季はここまで全てリリーフで登板。初めて中継ぎ投手としてシーズンを過ごし、結果は残せているが、難しさも感じている。
「先発と中継ぎというのは全く別物なので。1球で後悔することも中継ぎの方が多いです。準備の仕方も違いますし、初めてなので、やっと流れが分かってきたという感じです。1球で試合をひっくり返されてしまったりするのが中継ぎなので、1球の重みというのを改めて感じました」
先発と違い、任されるのは終盤の短いイニング。接戦の場面では1つの失点がチームの勝敗に影響する。6月3日の中日戦(バンテリン)では1点リードの7回に登板。先頭のビシエドに浮いたスライダーを左翼線二塁打され、その後スクイズで同点に追いつかれた。
7月10日の日本ハム戦(ZOZOマリン)では3-3の同点の場面で登板。2死から清水優心に真ん中に入ったスライダーを左翼席へ運ばれた。その後チームが同点に追いつき勝ち負けはつかなかったものの、“1球の重み”を感じた2試合だった。
3月には「充実した1年だったなと、振り返って思えればいいかなと思います」と語っていた。自分の成績には、まだまだ満足はしていない。「これまで戦力になっていなかったので、まずは1年間やり切りたい。そしてチームに貢献できるようにしたいなと。それだけです」。苦しみぬいてようやく覚醒の時を迎えた右腕は、更なる高みを目指す。
(上野明洸 / Akihiro Ueno)